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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その2】

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「ずっと待っているの…アノ人が来るのを…」
「『アノ人』って誰のことだよ!」
 私は気になってすぐに聞き返していた。

「ワタシの婚約者…あの人に逢いたい…」
「婚約者?どこにいるんだよ!」
「カレは…ワタシの分身体を探しているわ…」
「分身体?」
 私がそう言うと、岩の隙間からジャラリと鎖の音がして、細く白い腕が出て来た。手首には重そうな鉄の輪。それを僅(わず)かに隠すのは、広い袖口の白い服。肘の辺りで緩(ゆる)く絞(しぼ)ってある。

 彼女の物悲しさが流れ込んでくる。
 胸が締め付けられるほどの悲しみ…これは彼女の感情……?

「アナタの…腕を見せて…」
 そう言われた私は、咄嗟に水を掻き分け、出されたその腕に手を伸ばした。



 あと少しで届く、その時だった。

【咲夜!】
 脳裏に響く聞き覚えのある声と共に、海の上の方から水の渦が勢いよく降りてくる。
 私と彼女が伸ばしていた手は渦に流され、私はそのままその渦に飲まれてしまった。

 ぐるぐると竜巻のように渦を巻く水の中で、まるで誰かに包まれているような、そんな感覚がした。
 そして、私の周りには、たくさんの白い粒。これは…氷…? ───