~双晶麗月~ 【その2】
「ミシェ!」
「ん?なんですか?」
キッチンで後片付けをしているミシェルの手を取り、私の右腕にその手を当てた。
……が、私の腕は何も変化なし。
ミシェルの手で私の右腕をさすってみた。……さらに激しくさすってみた。
それでも変化なし………
「ははは。痛いですよ。どうしたんですか?」
平然としているミシェルに腹が立った。
「…なんでもないよ!」
ミシェルの手を振り落とし、また部屋へと続く階段を駆け上がった。
そして、再びベッドの上で、延々と解けない謎を考えていた。
なぜミシェルが触れても羽根が出てこない?あの羽根はどういう意味があるんだ。
『中にあるあなた』ってなんなんだ。
『いずれ来るであろうもの』って、なんなんだ…!
ミシェルはきっと私が探っているのを気付いている…なのに何も言わない。
それどころかあえて話を避けているようにも感じる。
でも遠まわしで私に何かを伝えようとしている気もする。
いったい何を考えているんだ……
そうして私はベッドの上で、天窓から覗く夜空を眺めていた。
今宵は新月。月の見えない空は暗くて、いつもより遠く感じた。そのまま何かに吸い込まれるような、そんな真っ暗な夜空。
私は一瞬めまいがして、目を閉じた。そして徐々に意識が遠くなるのを感じた。
「…痛っ!」
突然右肩の痣に激しい痛みが走る。私は必死に右肩を押さえたが、治まらない。あまりの痛みに私はベッドにうずくまった。
「うぅ〜ッ…なんなんだよまた……。治まれ!治まれ!治まれ!治まれ……!」
私は痛みに意識を集中し、効くかどうかもわからない言葉を、繰り返し念じ続けてみる。だが当然私の念も届かず、その激しい痛みに耐えられないまま私は意識を失ってしまった。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈