~双晶麗月~ 【その2】
その日の夕方、私はミシェルが作った夕飯を食べていた。
ミシェルがこの家に住むようになってから、なぜかミシェルが食事を作ってくれる。しかもほとんど毎日和食だった。そしてミシェルはいつも私の分だけ食事を作る。
ミシェはいつも何を食べているんだろう?そういえば食べている所を見たことがない。
買い物もどうやって?お金も……どうしてるんだろう?
やっぱ『ちょちょいのちょい』なのか?
そう考えている私の前にミシェルは座り、私が食べているところをずっとにこにこして見ていた。
「なんだよじろじろ見んな」
「美味しそうに食べますね」
「別に!私は洋食のが好きなんだけどね!」
「洋食?日本人は和食でしょう?」
「固定観念は捨てろ」
そんな私の言葉を聞いているのか聞いていないのか、ミシェルはずっとご機嫌だった。
「オマエさ、なんでそんなににこにこしてんの?なんかいいことでもあったのか?」
「いえ、こういうフツーの何気ない生活もいいもんですね」
「はぁ〜〜?」
私は開いた口が塞がらなかった。
「あのさ!新婚夫婦みたいなこというのやめてくんない?しかも立場が逆じゃん!」
「僕は……こんな生活したことなかったんで」
そう言ってミシェルは顔を曇らせた。
そういえばミシェルの生活って……どういう生活してたんだろう……
謎の多いミシェルのことを考えつつも、私はちゃっかりお腹いっぱいになるほど食べ、部屋に戻った。
そして、以前ミシェルから渡されたあの白いハンカチを手に取り、右肩の痣と同じ紋様を見つめた。そのハンカチにはまだフィルの血の花びらが入ったままだ。
私はそのままべッドにゴロンと横になった。
今のところ右腕に変化はない。
確かあの日、あの狼が現れた日の朝から痛んでいた。
そしてミシェルが触れた時に白い翼になり、手を離した時に元に戻った。
「もしかして……」
私は勢いよくベッドから起き上がり、部屋から出て階段を駆け下りた。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈