~双晶麗月~ 【その2】
ミシェルは真顔のまま話し続ける。
「おかしいですか?かなり[フツー]にしてるつもりなんですけど」
ミシェルは自分の体を上から下まで見た。気付けば背中の大きな翼が消えている。
「あのさ!今はフツーには見えるかもしれんが!でもさ!そういうことじゃなくて!」
「ならオッケーじゃないですか。さ、行きましょうか」
ミシェルは素早くそう言い放ち、くるりと向きを変え、道を歩き始めた。
私はミシェルのその態度に苛立った。
「あほか!どこ行くってんだよ!」
するとミシェルは突然立ち止まる。そしてくるりと振り返った。
「な…なんなんだよ!」
怯(ひる)む私を見て、ミシェルは淡いグレーの目を輝かせ、にっこりと微笑んだ。
「おうちに帰るんですよ。[僕たちのお・う・ち]へ」
何か企んでいるかのように微笑むミシェル。
「はっ!?何言ってんの!?[僕たちのおうち]って!」
「さぁ行きましょう」
ミシェルがにこにこしながらそう言って、私の肩に手をまわす。すると、私の右腕から大量の白い羽根が飛び散った。
「うわっ!」
ミシェルが私の肩に触れている間、白い羽根がどんどん出てきて、宙を舞う。
「これっ!どうにかしろって!」
「あぁ、すみません」
ミシェルは驚いた風でもなく、軽く謝って手を離した。そして、白い羽根は一瞬にして消えた。
「もう!なんだってんだよ!まったく!」
私はミシェルを横目で見ながら遠ざかるように歩き始めた。
するとミシェルは私の腕ぐいっと引っ張り、自らの体に私を引き寄せた。私の腕からはまたしても白い羽根が溢れ出している。
「なっ…なにすんだっ…!」
私が慌てて見上げると、そこには柔らかく微笑むミシェルの顔がすぐそばにあった。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈