~双晶麗月~ 【その2】
◆第4章 ほんの少しの後悔で。◆
『守護はもう必要ないと言ってるんだ!帰ってくれ!』
そう言ってしまったことに、私は少し後悔していた。巨大狼から必死で逃げていた私を助けてくれたのは、まぎれもなくミシェルだった。
あんなものが私を襲ってくる。私は本当に一人で生きていけるのか……
再び恐怖と不安がよぎる。
『まぁいいでしょう。いいタイミングだったかもしれません。あなたの元へ[いずれ来るであろうもの]からあの子は護りきれないでしょうから』
以前ミシェルは言っていた。
[いずれ来るであろうもの]って…さっきのだろうか?
確かにあの大きさでは、きっとフィルは殺られていただろう。
護られていなければ、おそらく私も……
いや、私はもう一人で強く生きていくと決めたんだ……
恐怖心を打ち消し、しばらく坂道を歩いた。
その後、公園が見えなくなる所まで来た頃だった。上空でバサリと音がしたと思ったら、私の目の前に、静かに男が降り立つ。ミシェルだ。その背中には大きな黒い翼。
それでも私はまだ迷っていた。
この目の前の男を信じるべきか信じざるべきか……
「僕はあなたの1番上の兄貴になりましたよ?[フツーの兄貴]ですからご心配なさらないで」
突然目の前で真顔になるミシェルに、私は目が点になった。
「バ…バッカじゃねぇの!そういう問題じゃねぇって言ってんだろ!?だいたいどこがフツーなんだよ!どこが!で、なんで[一番上の兄貴]なんだよ!私の兄貴は一人だ!」
以前雄吾の姉さんが見た[兄貴]のことを思い出した。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈