~双晶麗月~ 【その2】
教室に着いてすぐ、私は自分の席に座りその本をパラパラとめくる。しばらくして、本の中盤辺りにそれらしきことが書いてあるのを見つけた。
[フェンリルは、神ロキと女巨人アングルボザの子。3匹の魔物のうちの1匹である]
魔物……か。やっぱり。雰囲気はそんなカンジだったな。
フェンリルの末裔ってことは、フェンリルの子供であるハティとマーニ?それともその子供とか?それら一族がいるってこと本には書いてないんだけど……
それとミシェルのあの姿……
黒い翼と長い身体と氷の粒、『[ニズ]と呼んで』と言っていたくらいだし、それに名前も[ミシェル・ニズ・フォルスト]っていうくらいだからね……。
まぁ本に書いてあることが正しいとすれば、ニズホッグは氷の国ニヴルヘイムにいるはずだから、そのものではないとしても……きっとどこか繋がっているんだろう。
[フィルは死者の国ナーストレンドへ帰った]と、ミシェルは言っていた。
本には書かれていない何かがあるような気がする……
私は延々とまた考え込んでいた。
「おい!いいもん載ってたか?」
雄吾が図書館から戻り、私の肩をポンと叩いた。
私は驚いて本を落としてしまった。
「ん?ニズホッグ?なんか気味悪いやつだな」
落ちた本が開いたページは、偶然にも大きく口を開けたニズホッグの絵が書かれていた。
「気味悪い?…でもね、これ、月明かりを浴びるとダークグリーンに光って綺麗なんだ」
「ふぅ〜ん」
私は落とした本を拾いながら、そんなことが本に載っていたわけではないのに、なぜかそう言っていた。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈