~双晶麗月~ 【その2】
「いってらっしゃ〜い!」
エプロンを付けたミシェルが玄関の外まで出てきて手を振る。
驚いた私はミシェルの元まで駆け寄り、小声で言った。
《あのさ!出てこなくていいから!》
《いいじゃないですか。皆こういうのやってるでしょ?》
なぜかミシェルも小声になる。
《そういう意味じゃなくて〜!私一人暮らしのはずなのに、オトコが家の中から出てきたらオカシイだろ!!しかもエプロン付けてるしッ!》
そう言って私はミシェルのエプロンをぐいっと引っ張る。
だが、ミシェルもそれを取られまいとエプロンを押さえる。
《気に入ってるんですから外しませんよ?》
《外さないなら中に入れ!》
そんなやり取りをしてる矢先に、道路から声がした。
「よぅ!」
《ほら!来ちゃったじゃん!》
全身から汗が出るようだった。
声のする方を見た私は、再び冷や汗が。
声の主はクラスメイトの雄吾だった。いきなり見つかったのが雄吾だったことに、私は相当落ち込んだ。アイツは絶対詮索してくるに違いない。
雄吾は[兄貴]を見てどんな顔をするのか。
不安になった私は、慌ててミシェルを玄関に押し込もうとしたが、ミシェルは動じない。
《ちょっと!何やってんだよ!中に入れって!》
《何言ってんですか。ご挨拶しないとね》
《バカ!挨拶なんてしなくていいんだよッ!》
慌てる私をよそに、ミシェルは強引に雄吾の方に歩み寄っていった。
私はさらに[ミシェルと出会ってしまったこと]自体を後悔した……。
作品名:~双晶麗月~ 【その2】 作家名:野琴 海生奈