山つつじ
洋平からのメールで指定された時間までにはかなり早かったが、聡子はマンションを出た。快晴の空を見上げる。朝早いせいか、頬に当たる微風がやや冷たく感じたが、やや火照ったような頬には気持ちよく思えた。
駅の近くのどこかで昼食のために何かを買おうと思ったが、どこも開いていない。開いているのはファーストフードの店だけだった。そして、聡子は行楽弁当を作ってくるのだったなあと後悔した。こんなことはずうっと無かったので思い至らなかったのだ。
待ち合わせ時間までは、まだまだある。聡子はシャッターを閉じている商店街をまた歩き出す。開店にそなえ、車から荷物を運びいれる人、急ぎ足で駅に向かう人。会う人皆に「これからデートなの」と告げてみたい気がする。あ、やはり少女ぽいかあと思いなおし、洋平は、どういう女性が好みなのだろうと考える。ショーウィンドーに映る自分の姿を見て、少しため息をつく。低い山だと思ったので、ジーパン、Tシャツの上に厚めの綿のシャツだ。
駅前に戻って、待つ場所を決めメールを打った。【おはようございます。嬉しくて(^^) 早く着いてしまいました。改札前で待っています】と打って、お待ちしておりますの方がいいかな でも 固すぎだろうなあと迷ったが、そのまま送信ボタンを押した。
すぐに【今○○あたり、もうすぐ着きます(^o^)】と返信が来た。
洋平が大股でこちらに向かってくるのを眺めながら、聡子はああ良かったと思った。洋平もジーパンにTシャツ。上にボタンダウンのシャツだ。シャツの裾が歩く度に大きく波打っている。
「早かったんだ、待ちくたびれた?」といいながらホームに向かう洋平のあとをついて歩く。まだ少し時間があった。空いているベンチに座って、お昼をどうしようかと相談した。天気がいいから野外で食べるのもいいねという洋平の提案に、聡子はうんうん力強く頷いた。着いた駅近辺で何か買って行くことにした。