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俺とみこの日常 10話

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視点変更(みこ→まり)

あーあ、止め刺した。折角一生懸命耐えてたのに。…そういや、みこの泣いてる姿初めて見るな。
「み、みこさん、なんでそんなに泣いてるんですか?」
どうやら美菜子ちゃんは、自分が止めを刺した事に気付いてない。
…一応教えた方がいいかな。
「とっても言いづらいんだけど…」
「美菜子ちゃんが止めを刺したの」
お姉ちゃんが先に言ってしまった。
お姉ちゃんはというと、小さく笑っている。他の人が気付くか気付かないかレベルで。
「えっ」
「みこ、身体が小さいのがコンプレックスだから、あまり深く言わない方が言いよ」
「つまり『ロリっ子』であることを気にしている、と」
みこの号泣がさらに激しくなった。…号泣の一個上って何だろう?
「追い打ちかけないの」
お姉ちゃんのツッコミ。…お姉ちゃんツッコミとかできたんだ。初めて知った。
「…気にする事かなぁ?まあ、あたしはそのロリっ子が好きなんだから一生わかんないだろうけど。いや~、泣いてるみこさん可愛い☆あ、もちろん笑ってる方が百倍可愛い☆」
美菜子ちゃんがぼそぼそ独り言を言いだす。ぼそぼそと言っても、結構な声量なので、私に聞こえているしお姉ちゃんにも聞こえている。…反応を見るに、みこには聞こえてない。よかったね、二人とも。
…いやな予感がする。独り言を聞いてそう思った。
この子、優美と同じにおいがする。もしかしたらこの子も…。
「いつかきっとみこさんをベッドの上に押し倒して『自主規制!!!』」
あ、その通りだった。優美、恋のライバル増えたよ。みこ、蒼大さんまでの障害増えたよ。
「あ、それいいわね~、いつか私ももみこちゃんに…」
「お姉ちゃん!!?」
いきなり何を言い出すんだろう、この人。
「ふふ、気にしないで、ほ・ん・き☆」
「本気かい!!」
「美菜子ちゃんには負けないから」
その当の美菜子ちゃんは独り言に集中していて…自分の世界に入っていて、聞こえてないみたいだ。
「お姉ちゃん、訃報があります」
「なに?」
「みこには好きな人がいます。それにみこの事を好きな人はお姉ちゃんを含めて三人です」
その三人が女子。なんであの子、同性愛者に好かれるんだろう…?
「みこちゃんモテモテね。…ま、最後には私がもらうけど」
「お、お姉ちゃん…」
ちょっとだけ、男らしくてカッコいいなんて思った自分がいやだ。
「ふふ、嘘よ。ほら、エイプリルフール」
「今日、四月八日ですけど?」
「気にしない気にしない」
…これは気になる誤差だろう。…でもよかった。嘘で。
「それでさお姉ちゃん、この二人どうする?」
この二人とは、もちろんのこと、みこと美菜子ちゃんの事である。
みこは泣き疲れて眠っている。…可愛い。
美菜子ちゃんはなんかブツブツ言ってる。…怖い。
「私、みこちゃん運ぶから、美菜子ちゃんをお願い」
「何言ってるの、お姉ちゃん。あたしの方がみこと仲いいんだから、あたしが」
「ほ、ほら、みこちゃんの方が軽いじゃない?」
「お姉ちゃん力あるじゃん、だからお願い!」
「なんか変なモードに入ってる子運ぶの嫌よ!」
「私も同意見!」
シン
あれ?なんか静かになった。
「何が同意見なんです?」
びくぅっ!
2人の背筋が一気にピーンと伸びる。
あ、独り言モードから抜けたんだ。よかった、助かった。
「あ、あのね、もう暗くなってきたし、もう帰そうかなって」
「…帰”そう”?」
「み、みこの事!」
なんとか切り抜けたか?
「あ、私が連れて帰りますよ、家となりだし。…泣かせたの私だし」
切り抜け切れてない!!まだ危ない!!
「き、気にしないで!!みこ、とっても優しい子だから!!」
「そうですか?」
「うん!!」
適当な事言って切り抜けきれたか。ちなみにみこが優しいって言うのはほんとだ。
「そういうことなら、気にしません」
そういうと、みこをお姫様抱っこして、じゃ、帰りますね。と言って、部屋から出て行った。
そのまま帰すわけにもいかない。あたしも送っていく。そうしないとみこが汚される気がする。
「替わろうか?」
「いえ、いいです」
「んじゃせめて、おんぶにしたら?」
私の提案通り、おんぶに替える美菜子ちゃん。素直な子。
自分の靴をはき、みこの靴を持つと、
「お邪魔しました」
向かうは川島家。
作品名:俺とみこの日常 10話 作家名:ざぶ