俺とみこの日常 10話
「お姉ちゃん、放してあげてもいいんじゃ…?」
既に上野家、『まりのへや』に入っている。ちなみに、あたしと美菜子ちゃんの靴はまりちゃんが脱がせてくれた。
「あ、それもそうね」
あたしと美菜子ちゃんを解放するお姉さん。
美菜子ちゃんは怯えて震えている。そりゃそうだ。引っ越してきて数日ののちに拉致されることになるなんて考えてなかっただろう。…ま、男子にされたんじゃないだけまだましか。
「ねえ、みこ」
「ん?」
まりちゃんは美菜子ちゃんを指さすと、あたしに質問してきた
「この子、誰?」
あ、そういえば言ってなかったっけ。
「あたしの隣の家に引っ越してきた池谷美菜子ちゃん」
「あ、引っ越してきたんだ」
そういうと、ちょっとした沈黙の後、
「引っ越してきていきなり拉致してごめんね。お姉ちゃん、可愛い子大好きだから」
という事は、拉致されたあたしは可愛いと思われてるんだろう。…嬉しい。
「どした?顔赤いよ、みこ」
「気にしないで」
「あ、話ちょっと戻すけどさ、美菜子ちゃんっていくつ?」
あ、それはあたしも知らない。
その場にいる全員の視線が美菜子ちゃんに集中する。
美菜子ちゃんは恥ずかしがりながら、小声で答える。
「こ、今年で十三歳です。ちなみに、兄は今年で十四歳です」
へえ、あたしの一個下。それに家が隣という事はあたしやまりちゃん、優美ちゃんと一緒の中学。
「後輩かー、にしては大きいね」
確かに。美菜子ちゃんのお兄さん…圭太…だっけ?も大きかった。ちなみにあたしが143cm。…去年の10月に測定した時から、全く伸びてない。悲しい。ま、まぁ、ソレは置いといて。まりちゃんが150cmくらい。美菜子ちゃんはそれよりも5cmくらい大きい。
さらに、胸も。あたしが、『段差なし』。…去年の4月に測定した時から全く伸びてない。泣きそう。っていうか、段差なしってあり得るの?…それは置いといて、確か、まりちゃんは、『下着の上からなら分かる』レベルである。美菜子ちゃんは、『服の上から分かる』レベル。
あれ?この前まで小学生だよね、この子。
「え!?そうだったんですか!?あたしより一個上!!?」
「そんなに驚く?」
相当驚いている美菜子ちゃんに、まりさんのお姉さんが”さりげなく”聞く。
「だって、まりさんはともかく、みこさん!『ちっちゃくて可愛い!』って思ってたのに…あ」
美菜子ちゃんは、『思ってたのに』のあたりで、半べそになってるあたしに気付いた…気付いてくれた。気付いてくれてありがとう。それ以上言われると泣いてたよ。
「みこさん、ごめんなさい!!」
謝ってくれるなんて…優しい子。ちっちゃいお姉さん泣いちゃいそう。
「…謝らなくていいよ。自覚あるもん。ちっちゃいって」
そう、あたしがいじけた態度を見せると、美菜子ちゃんに怒られた。
「っそ、そこが可愛いんですよ!!ちっちゃいからこそ!!胸も!!」
ここで、あたしの涙腺が崩壊した。…この先の事はあまり覚えてない。
作品名:俺とみこの日常 10話 作家名:ざぶ