俺とみこの日常 10話
♪~
あ、来た。今度は誰かな。
「はーい」
前回同様、そーくんは出てこない。出れない。
ガチャ
「みこ、大丈夫!?」
あ、まりちゃ…。…背後に誰かいる。お姉さんだろうか。
「みこ?誰ですか、ソレ。家にそんな子はいません」
バタン、カチャ
いやー、危なかった。あのまま、まりちゃんをあげていたら大変な事に。
…っていうか、追跡されないように、って言ったよね、もう。
♪~
「みこー!開けてー!!」
絶対開けない。開けたら絶対お姉さんが入ってくる。それだけは避けたい。
「みこーー!!!怒るよー!!」
あたしが怒るよ?全く、近所迷惑ってものを考えてほしい。…と言っても、池谷家しか無いけど…。隣接してる家。
「みこー!!!!」
「ああ、もううるさい!!!」
ニ階からそーくんの怒った声が聞こえてくる。そして、階段をドタバタ言わせて下りてきた。
「出てやれ!うるさい!!」
「…ごめんなさい、でも……」
あたしが謝ってる間に、そーくんはドアの鍵を開けた。
カチャ
まだ宿題が終わってないらしく、すぐに自室へと戻っていった。
そーくんに怒られるの初めて…。怖かった…。これからは怒らせないようにしないと…。
ガチャ
「あ、みこ、ようやく出てくれた…って蒼大さん、なんで怒ってるの?」
…怒ってもいいかな?いいよね?
「君達姉妹のせい」
「もう、そんな事言って。お姉ちゃん関係無いじゃんか」
どうやら気付いてないらしい。
「後ろ、見てみて?」
「後ろ?」
言われた通り、振り向くまりちゃん。…そこには、綺麗なお姉さん&美菜子ちゃんが。あれ?美菜子ちゃん、いつの間に?
「お、お姉ちゃん!?そ、それと、誰?」
「あ、美菜子ちゃん、何か用?」
あたしが聞くと、美菜子ちゃんはもじもじしながら、
「あ、いえ、何か、騒がしかったから…」
と答えた。なるほど。お隣さんに聞こえるほど騒がしかったのか。
「ほら、まり。謝りなさい」
「騒がしくしてすいませんでした」
素直にお姉さんのいう事を聞くまりちゃん。どうやら姉妹仲は悪くないみたいだ。…電話の時点で大体分かってたけど。
「あ、いいえ、気にしなくていいですよ」
そういうと美菜子ちゃんは家に帰ろうと自宅の方を向く。その時。
「待って、…美菜子ちゃんだっけ?今暇?」
まりちゃんのお姉さんが質問を投げかける。
「はい、特に何もありませんけど…」
ふーん。引っ越し作業は終わったみたいだ。ま、引っ越してきてもう数日経つもんね。
「確保!!」
「えっ」
あ、捕まった。美菜子ちゃんはバタバタ動いて抵抗しているが、あれでは抜けきれない。もっと、全身を使って動かないと。
そうこう考えていると、
「みこちゃんも確保!!」
捕まった。油断していた。この人はそもそもあたし確保にここまで来てるんだった。忘れてた。
「ふっ!」
全身を使っての抵抗。が、抜け出せない。ガッチリ掴んでいる。
「まり、帰ろ!」
あたしを左手で、美菜子ちゃんを右手で確保したお姉さん。…すごい腕力だ。もしかしたらあたしの肋骨にひびが入るかも…、いや、折れるかもしれない。
「それ、拉致っていうんじゃ?」
「気にしない!ほら、帰るよ!」
その後、上野家にたどり着くまで、一回もまりちゃんは助けてくれなかった。薄情者。
…まぁ、あたしが助けを求めなかったからかもだけど。
作品名:俺とみこの日常 10話 作家名:ざぶ