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一羽のココロと理不尽なセカイ

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「ああ、装備は万全だ。そういうお前はどうなんだ?まだシュミレーションしたことないだろう?装備はちゃんと持ってるのか?」
 そう言われると持っていない気がする。いや、持っていない。急に不安になってきた。
 俺は一体何を考えてるんだ。装備が無けりゃ戦うことすら出来ないじゃないか。
「恭介・・・実は・・・」
「ああ、一緒に装備、貰いに行こうぜ」
「すいません」
 

 恭介と一緒に龍司の部屋に行くと、何故かラトがいた。
 どうやらまた何かやらかしたようで、龍司からこっ酷く叱られているらしい。
 こんな状況だというのに、彼女は一体何をしたのだろうか?
「龍司、東馬の装備が欲しいんだが・・・」
 恭介が堂々とその場に割り込んだ。
「ん?ああ忘れてたな、悪い。今渡すから」
「フンッお前がTMなんて未だに信じられないぜ!」
 ラトが元気良く俺を非難した。
「俺もお前みたいなちびっ子が戦うなんて考えられないな」
 どうも俺はラトに向ってこういう言葉しか言えないらしい。
「何ぃ!あたしはもう13だ!ちびっ子じゃないぞ!」
 ちびっ子だった。
 龍司はクローゼットを開き、さらに奥に仕掛け扉のように作られた扉のロックを解除
 した。そしてその先にあったのは、黒い防弾ベストに、色々と小さな装備品が付けら
 れたヘルメット、腰から脚にかけて巻きつくように取り付けられたホルスターやその他
 もろもろ。装備一式が揃っていた。
「うわぁスゲェな。俺こんなに近くで見るの初めてだ」
 恭介が興味津々にその装備を観察する。
「どうしてだ?皆これを着てるんじゃないのか?」
 これは俺の素朴な質問。
「これはTMのメンバーのみが着る事が出来る特別な装備だ。一般隊員が着るのとは
 一味も二味も違う」
 そう言って恭介は自信満々気に鼻を伸ばす。
「ムッ・・・あたしの時はお金かかったのに・・・・」
「お前はわざわざ小さいのを特注で作るのに金がかかったんだ。着れるだけありがたく
 思え」
 龍司はラトを冷たくあしらうと、俺に黒装備の全てをどっさり手渡した。これが思いの
 他結構重い。
「取り付け方は・・・ラトにでも教えてもらってくれ、今は少し忙しい」
 そう言うと龍司は手を軽く振り、俺達3人を部屋から追い出した。
 ラトに聞け、か。何だかすんなりうまくいく気がしないんだが・・・・。
 
 案の定、俺は部屋にて装備の取り付けにかなり苦戦していた。いや、どちらかというと
 ラトに苦戦していたと言ったほうが適当かもしれない。
「だから違うっ!そっちはこう!そうじゃなくてっ」
 そう、ここ30分ぐらいずっとこの調子だ。
「だーっ!こうだろ?あってるじゃんか」
「違うって、ここを・・・こう!」
「こうか!」
「違うこう!」
 ってな感じで、それから20分後、やっと事態は収拾した。どれだけ無駄な時間が
 流れたことだろう。結局俺が最初に着たやり方があってたんじゃねぇか。
「なんつーか、お前ら仲良いな」
『それは絶対にない』
 思わず声が重なった。
 作戦開始まであと4時間。装備品の使い方も覚えておかないといけないだろうと、
 俺はジャックのところへ向った。案外ジャックはすぐ見つかり、事情を話すとすぐに
 でも付き合ってくれた。
 
 作戦開始まであと1時間。
 
 そうこうしているうちに残りは1時間となっていた。
 恭介も流石に現実を見始めたのか、緊張で俺の声にあまり答えてくれなくなった。
 部屋を出て校舎を歩いていると、あちこちに隊員たちの姿が窺えた。そのほとんどが
 俺とあまり歳の変わらない高校生ほどの人ばかりで、緊張で肩を震わせながらベンチに
 座るやつや、急に泣き始めるやつ。そんな人たちを見ていて、俺にもやっと実感が
 わいてきた。これから戦争が始まるという事が。
「部屋でじっとしてるより、外の風に当たってるほうが気が軽くなるよ」
「ナユタ、お前は怖くないのか?その、戦争が」
「今まで色んな任務やってきたけどねやっぱり怖いよ。でも使命があるからやっていける。
 多分皆そう。皆がそれぞれに自分に使命を持ってて、だから戦えるんじゃないかな」
 ナユタは小さく微笑んだ。
「そういうものなのか?」
 俺はまだ理解できないようだ。愛井香だって、何か使命があるみたいな事言ってた
 ような覚えがある。すると突然校内に放送が響き渡る。
『作戦開始15分前だ。全隊員に告ぐ、武器を取り直ちにグラウンドに集まれ』
 龍司の声ではなかった。
「ナユタ、今のは龍司じゃないよな?」
「ああ、龍司は1―Aのリーダーで、総隊長は別にちゃんといるんだ」
 俺はナユタにそのまま連れられ、銃器保管庫まで来たのだった。素早く武器を取る隊員
 たちを見ていて圧倒される。本当に戦うんだな。

「ほら、平岡君、これ使って」
 っと、ナユタに手渡されたのは自動小銃だった。だが実はこれを使うのは初めてでは
 無い。さっきジャックに会いに行った時についでにこの銃の使い方を教えてもらったんだ。一度使っているから心配はいらないとナユタに広言し、俺達2人はそのままTM
 の本部に向った。TMの本部通称『ロゲッジ』には、既に他3人の姿があった。
「おお東馬、緊張しとるようじゃの」
 ハルは普段通りののんびりムードで、こうした任務前の空気としてはいささか不釣合い
 なものであった。
「東馬、とにかく自分に課された任務だけに集中するんだいいな」
 ジャックも普段通りだ。まあいつもシリアスな雰囲気をかもし出しているので、別に今に限ってガチというわけではなさそうだ。
「平岡君、僕は君を応援してるよ。空に向って交信してるからさ」
 ナユタもいつも通りに理解不能な電波ストーリーを繰り広げている。どうも彼の脳内に
 ノーマルということが組み込まれていないようで、流石の俺もこういう応援の仕方は
 されたことがない故に少し拍子抜けした。
「・・・・・」
 ラトはというと・・・・部屋の端で装備品の確認をしながら、時折こちらのほうを見てくる。
 何か言いたげな彼女のところへ行ってみると、素早く傍にあったイスの上に立ち、
「近づくなヘタレ!足引っ張るなよバアァァカ!」
 などと俺に罵声を浴びせた。
 その後ジャックに叱られてイスから叩き落されたのは言うまでも無い。
 そんなこんなでロゲッジの中で準備した後、5人でグラウンドに向った。グラウンド
 には500人の突撃隊が整列していた。場に張り詰めた緊張感が自然と俺にもひしひしと伝わってきた。
「全員集まったな、作戦内容の変更は無い。武運を祈る」
 全員の前に立っていたのは見たことの無い年配の男だった。
「ジャック、あの人は誰?」
「村山玄膵、マインドの総司令官だ。作戦本部で一番の権力者さ。覚えておけ」
 村山玄膵。そう呼ばれた男の額には深い傷があった。白いヒゲがなんとも特徴的で、
 彼を知らない人が見ても凄まじいオーラに圧倒、そう思えるような貫禄を持っていた。
「進め!」
 龍司が呼びかけると、好餌社本部への進軍が始まった。
 TMのメンバーも各々の個性的な武器を手にし、それぞれのバイクに乗る。
「東馬、ワシのに乗るんじゃ」