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一羽のココロと理不尽なセカイ

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 のだった。
 
 
 ・・・・・・・・・・・・・どうやらこの浮遊感は慣れそうに無い。
 
 掃除用具入れから出た先には土曜日の朝が教室を照らしていた。
 横を見れば御坂の姿があり、少々驚いた。
「何で御坂がここに?」
「慌てたわよ!あのね、現実世界に帰るときは精神世界に一緒に行った私と帰らないと
 時間軸に歪みが出来ちゃうの」
 息を切らしながら説明をしてくれる御坂、何か悪いことしたな・・・。
「すまん・・・そんな話聞いてなかった。なぁ御坂」
「うん?」
「ナユタってやつのこと何か知らないか?どこにいるとか」
「いや、ちょっとわからないかな、でもナユタって人は知ってるよ。ショートヘヤーの
 黒髪男子だっけな」
 頬を赤くしてぼんやりするような目でそう説明されても俺にはよく理解出来ないんだが。
 どうやらナユタとは男らしい。ただそれだけが手がかりだ。
 俺はその後御坂と別れ学校を後にした。
 
「おかえり兄ちゃん。何でまた制服姿なの?今日土曜日でしょ」
 家に帰ると可憐が何故か俺の部屋にいた。よし、こいつに精神世界での大冒険話を聞かせてやろうではないか。度肝を抜かしてぶっ倒れるなよ?
 ということで、俺は精神世界の話しを一から説明し始めた・・・・。
 
 ・・・・・・・・・・・。
 
「兄ちゃん・・・・」
「どうだ?驚いただろう」
「何ていうか・・・ごめんね、妹が不甲斐ないばかりに・・・・」
 何で哀れむような顔をする!俺は事実を言っただけなのに!
「あっ・・・あのな花蓮」
「良いよ、何も言わないで。兄ちゃんは悪くないよ。ただちょっと頭がアレなだけ」
 アレ言うな!
 クソっ花蓮なら信じてくれると思ったのに。何だこの超常識人みたいな反応は!
 妹に頭のことを心配された兄である俺は、花蓮を部屋から追い出した。
 
 
                 5
 
 
 次の日、日曜日の朝を迎えた俺は部屋中に響くゲームのBGMに起こされた。
「何でわざわざ俺の部屋でゲームをしてるんだ」
「だって母さんがドラマ見てるんだもん」
 それだけ言うと花蓮は再びゲームに没頭し始めた。ゲーム画面に目をやると、そこには
 青い髪をした美男子がこちらを向いて何やらかゆい台詞を口にしていた。
「これって乙女ゲーとか言うやつだろ?」
「うん、格好良いよねぇ少路君・・・・」
 我が妹ながら気持ち悪い笑みを浮かべる花蓮に流石の俺も少し引いた。せっかくの
 綺麗な顔もこれじゃあ台無しだ。
 そんな花蓮をほったらかしてリビングへ向う。朝食を食べ、歯を磨き服を着替えると、
 携帯にメールが届いた。
 送り主は智也で、「今日暇か?」とだけの何とも殺風景な文章だった。
 決して俺は暇というわけではない。ナユタを探す任務がまだ残っている。
 しかし今日は日曜日。久しぶりに友人と普通に遊ぶのもたまには良いのかもしれない。
 俺はメールを返信し、外着へと着替えて指定された待ち合わせ場所へと向った。
 集合場所の公園に着くと、智也がこちらへと走ってきた。
「よう東馬。これからどこ行く?」
「なぁ、その前に一つ聞いていいか?」
「何だよ急に改まって」
「黒髪でショートヘヤーの男子生徒を知らないか?ナユタって言う・・・」
 智也は深い溜息をつくと、俺の両肩をがしりと掴み呟く。
「そんなやつ、学校中にいるだろ」
 こいつの言葉は正論だった。そりゃあ黒髪&ショートヘヤーな男子なんて腐るほどいる。
 もう少し特徴がわかれば良いんだが、何せ情報が足りない。
「なゆた・・・だっけ?変わった名前だな。本当にいるのかそんなやつ」
「いや、俺も知らないんだけどさ」
 何じゃそりゃと言いたげな智也の顔。俺も一度そんな顔してみたい、今してみるか?
「東馬、何て顔してやがる」
 誰にどうこう言われる筋合いは無い。俺はやりたいことをやる。それだけだ。
 それから俺たち2人はゲーセンに行ったりして時間を埋めた。昼になって昼食。
 ファストフード店に向う途中御坂とばったり出くわした。
「あれ唯じゃん、お前も一緒にどうだ?」
 智也が誘うが、御坂はどうもバツの悪そうな面持ちで、
「いや・・・今は・・」
 そういい残すと、御坂はぎこちない作り笑顔が崩れかけた芳顔を浮かべてそそくさとその場から去って行ってしまった。
「どうしたんだ?唯のやつ」
 俺は不審に思い、御坂の後を追うことにした。こういってコソコソとするのはよくない
 とは思ったが、もし彼女が何か精神世界のことと関係した出来事に巻き込まれてたと
 したら。そう思うといてもたってもいられなくなり、智也とはその場で別れた。
 そして公園の角にさしかかった所。
「平岡君、いるんでしょ?」
 気付いていたのか、御坂は振り返ることなく背を向けたまま俺に声をかけた。
「そりゃあ、あんな断られ方したら気になるだろう」
「秘密をさぐるのって、あんまり褒められたことじゃないわよ?」
 苦笑しながら御坂はこちらへ振り向く。
「なぁ、一体どうしたんだ」
 さらに問い詰めてみる。
「実は・・・龍司に言われたの。その、お前は現実の人間との接触を控えろって」
 彼女・・・いや、俺は龍司が御坂に吹き込んだ言葉の意味がうまく理解出来なかった。
 現実の人間、それはつまり、さっきまで俺の隣にいた智也や学校の人間たち、さらには
 街中の人のことを指すのだろう。彼女が一体なにをしたっていうんだ。
「御坂、そんな必要は・・・」
「良いの、だって私・・・・」
 そう言って彼女は踵を返すようにまた背を向けてしまった。
 そりゃあ言いたくないことの1つや2つ、誰だってあるだろう。でももしそれが、
 彼女を苦しめているのであれば、そいつはきっと取り除いてやらないといけないんだ。
 仲間である俺が、聞いてやるべきなんだ。
「一人で抱え込むことなんてない。苦しい時は、頼ってもいいんだ」
 しばらく御坂は黙り込んだ。よく見ると、肩が少し震えているようだった。
「私のお父さん・・・好餌社で働いていたの」
 口をほとんど動かさずどこか悲愴感を抱いたような目で呟いた。
「お母さんは現実の世界の人間で、とてもじゃないけど、決して結ばれることの無い
 2人だった。私が生まれると、両親は精神世界の裏切り者として、処刑されたわ。
 当時現実の人間と精神の人間が結ばれるのは、許されることじゃなかったの。
 父の血を受け継いでいる私は、本当は現実にはいてはいけない存在。現実の人間と
 馴れ合えば、また同じ事を繰り返してしまうかもしれない。だから龍司はああ言った
 のだと思う。確かにそうよね・・・精神の人間なんて、いるようでいない存在みたいな
 ものだもの。私が生まれてこなければ、2人は・・・・」
「それは違うぞ、御坂」
 ストレートに言葉を発した俺を目を丸くして見つめる御坂。
「生まれてこなくていい人間なんてこの世にいない。お前が精神の人間だろうと現実の
 人間だろうと、そんなの関係ない。お前は今ここにいるただそれだけだ。過去の事は不幸だった。でも2人は、御坂が生まれて悪かったなんてこれっぽっちも思ってなかったと思う。だから2人の為にも、精一杯生きろ」