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ユメノウツツ

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「見た。でも普段が夢みたいなもんだからなあ。」
「普段が夢か。そんなもんか。」
「たとえばさ。」飛ぶ我夢。画面の視点は我夢を後ろから追いかけている。
「おお、すごい。」
「武空術だー。」
「本は図書館があるし、新作は本屋で買える。」
「小説家は仕事がありそうだね」我夢は三省堂書店の看板が浮いている本屋と図書館の上空を飛んでいた。
「テレビは?」
「テレビを買えば現実世界のテレビ局の番組がタダで見れる。近いうちにアナログ放送局はおしまいになるそうだ。あ、NHKは受信料払わないとだめみたいだけどね。デジタル放送局も各局ある。その気になれば自分で放送局立ち上げることもできそう。」
「映画は?」
「レンタルビデオもあるし映画館もある。やっぱ映画は一緒に大勢で見るのがいいよな。」
「そのへんは一緒だね。」
「ネット情報はタダで見れる。たとえば、あ、これは…」我夢の手から四角いモニタが出てくる。
「なんだそれ」
「俺が中等部にいたとき書いたブログ。」
「ひゃー見せろ見せろ」
「何々?ニコラ・テスラの世界システム?」
「ああ、好きだったんだよニコラ・テスラ。」
「誰?」
「エジソンのライバルだよ」
「世界システムって何よ」
「指向性マイクロ波ビームを高電圧で発射すると地球規模で今のネットみたいなことができるという仮説。」
「なんのことだかさっぱりだ。」
「ところで俺は東京サーバにいるけど、別サーバに移動するにはお金がかかる。でも宇宙にも行ける。」
「アナログで宇宙には行けないからなあ。」
「一千万かかるってそうじゃん。」
「デジタルなら十万で行けるよ。今度木星と土星行って来る。いいだろー!」
「木星と土星ツアーでいくら?」
「百万くらい。バイトとお年玉で五十万貯めた。あと五十万は親父から借りる。じゃ、このテレビ電話もお金がかかるのでそろそろ切るよ。」
「じゃね。」
「木星と土星から帰ってきたらまた来るよ。」
美術室の黒板モニタがまた黒くなった。
「んー、デジタルコンバートもなかなかいいかもしんないネー。」
椎名かちゆ副部長が言った。


 その後、我夢は木星探査機と土星探査機へ旅行に出かけた。両探査機とも量子コンピュータ搭載で、メモリや通信システムにも十分な余裕があったので、NASAがツアーを設定して参加者を募集していたのだ。両惑星では探査機の光学システムを使って惑星や衛星を間近から観察することができる。生身の人間では不可能なことがデータ人間では可能になりつつあった。
作品名:ユメノウツツ 作家名:中田しん