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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その1】

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「あの冷血残忍男…このハンカチで涙でも拭けって?冗談だろ?」
 その後私は、雲のない夜空に浮かぶ白い満月の下、丁寧に置かれた本とその上の白いハンカチを拾い上げた。だが、すぐに目に留まったのは、白いハンカチに書かれた見覚えのあるマーク。私の右肩の痣と同じ形……

「これって……!」
 再び空を見上げたが、男はいるはずもなく……
 そして本の中には大きな黒い羽根が挟まれていた。私はすぐにそのページを開いた。

[ニズホッグ。世界樹の根の一つを齧(かじ)り、氷の世界を護る蛇。終末の日には翼に死者を乗せて飛ぶ黒き龍となる。『嘲笑(ちょうしょう)する虐殺者』の異名を持つ]

 私は頭の中で延々とそれらの意味を考えた。
 いきなり殺されたフィルのこと、黒い翼を持つミシェルという男のこと、男が置いていったハンカチに書かれた私の痣と同じ紋様のこと、本に挟まれた黒い羽根のこと、そしてそのページに書かれていた内容のこと…

 考えても考えても答えは出ない。
 だが私は、その紋様の入った白いハンカチに何か、ある種の意味を感じ、拾い集めたフィルの花びらをそこへ包めるだけ包んで立ち上がった。見上げた夜空には白い満月が浮かぶ。


 そして、それらの本当の意味を私が知るのは、それから半年も後のことだった───