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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その1】

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 男は大したことではないとでも言うかのように、再び私の本をめくる。
 それを見た私はついに感情を抑えることができなくなり、左脇に持っていたカバンを振り上げた。そしてそのまま男に向かい、勢いよく投げつけた。
 だが、男はスルリとかわす。
 勢いで重いカバンは道路に落ち、中に入っていた教科書や筆箱が出てしまった。
 私はさらに怒りが込み上げた。 

「なんてことを…!」
「じゃあ、こうしときましょうか」
 男は開いていた本を閉じ、私の気持ちを遮るようにすぐさま右腕を振った。
 壁に付いていた血は、一瞬にして真っ赤な花びらとなり、その家の敷地とそれに面した道路に舞い落ちる。それはまるで赤い雪のようだった。

「女の子にはちょっと衝撃的でしたか」
 男は小さくため息をつき、腕を組んだ。私は震える手を力強く握りしめる。

「なんで!なんであんなことすんだよ!フィルが何したってんだよ!」
 気持ちが高ぶりすぎて涙も出ない。

「こちらが聞きたいです。なぜ[この僕]に飛び掛ってくるんですか」
 思ってもない質問に私は言葉を詰まらせた。

「そ…それは……!フィルは……私を護るために……」
「それはおかしいですね」
「なっ…!おかしい…?何がおかしいって言うんだ!」
「本当にあなたを護るため…ですか?」
「フィルは私の守護獣だ!得体知れないヤツに向かっていくのは当然だろ!」
 感情的になる私とは対照的に、男は冷静そのものだった。

 そして男は静かに言う。
「おかしいですよ。僕こそあなたを護るためにやってきたのに」
「えっ?」