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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その1】

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 そう、フィルが絶対に[いる]と確認できたのは、まだつい最近のこと。

───あれは2ヶ月ほど前。
 2学期の後半、12月初めだったが雲もない晴れた暖かい日。
 テスト期間の最終日で気を抜いていたのだろう。私は昼前の帰り道、夢中で本を読みながら歩いていたら、公道を歩いているということをすっかり忘れてしまっていた。周りの音も耳に入らない、そんな状態だった。
 その時、突然後ろから何ものかが私のスカートを強く引っ張った。

「ん?なんだ…?」
 驚いて立ち止まり後ろを振り向いた私は、私のすぐ後ろにいるものの姿に気付いた。その瞬間、私のすぐ横を大型トラックが勢い良く通り過ぎる。
 恐らくそれに気付かず歩き続けていたら、間違いなく事故にあっていただろう。

 あの時はまさか羽根の生えた狼だと思っていなかったから、正直相当驚いた。
 それから私はあの時見たものが何であるのかを、ひたすら調べた。そのうちフィルグスという名前が北欧神話に出てくる守護獣フィルギャと似ていると思った私は、北欧神話の話に徐々に惹(ひ)かれていった。

 フィルは、私に何かあった時だけ、危険を知らせるためにその気配を現していた。
 フィルの存在をこの目で確認してからは、毎日確実に部屋に食べ物を置くようになった。
普段は現れないフィルのために、食べそうなお肉を部屋の隅に置いてみたり、お皿に入れた水を置いたりしてみた。私なりの感謝の気持ちで。

 自分を護ってくれるものがいるというのは心強いもので、今まで一度も食べてる所を見たことないし、その量が減ったこともないけど、なんとなく喜んでくれてるんじゃないかと勝手に思い、満足していた────

 だがそのフィルが……突然目の前に現れた見知らぬ男に消された……
 それも残酷なほど、いとも簡単に………

 薄暗くなった青白い空の下、立ち尽くしている私の前に、男は静かに歩み寄る。男は私よりはるかに背が高い。そして男は無表情のまま言った。
「大丈夫ですよ。あの子はナーストレンドに帰っただけですから」
 そう言った男の目は、濃いブルーだった。