~双晶麗月~ 【その1】
あの時、『右腕、大丈夫ですか?』とうっすら笑みを浮かべた男と同じなのか…?
でもコイツ……もしニズホッグなら……死者の血をすする……?
「べ……べつに痛くねぇよ!」
私の頭の中は混乱していた。
その時すでに私の右腕は痺れ、ほとんど感覚がなくなっていた。
「では、見せて頂けますか?」
そう言われ、私は力のない右腕を見下ろした。長い髪が垂れ落ち、ようやく結んでいた白いレースのリボンが取れてなくなっていることに気付く。
「こちらが先ですか?」
そう言いいながら、ミシェルは私の後ろに立ち、素早く私の長い髪を両手にまとめた。
「何やってんだ……!」
驚いてミシェルの手を払いのけたその時、私の右腕はミシェルの手に掴まった。
長く綺麗な指。
あの雄吾とは大違いの、綺麗な手。
ミシェルの手によってまとめられていた私の髪は、静かに背中に垂れ落ちる。私は腕を掴まれたままの状態で、勢いよく振り返り、ミシェルを睨んだ。ところがミシェルは、私が落としたはずの白いレースのリボンをくわえていた。
「そのリボン……!」
私が驚く間もなく、ミシェルはそのまま魔法でも使ったかのように、素早くリボンを私の髪に結ぶ。私は呆然と立ち尽くす。
その掴まれた私の右腕は、すでに感覚が麻痺しているのか、まるで自分のものではないようだった。ミシェルはそっと私の右腕を真横に伸ばし、その綺麗な手のひらで軽くなぞる。そして瞬時に私の腕から強く白い光が放たれる。
「うわっ!なんなんだよこれは!」
私はあまりの眩しさに、顔を背けた。
作品名:~双晶麗月~ 【その1】 作家名:野琴 海生奈