~双晶麗月~ 【その1】
雄吾はまだ[アイツ]を見たことない。本当の兄貴も見たことない。大丈夫、気付いていない。そう、心の中で繰り返した。そして、私は冗談とも本気とも思えることを口走っていた。
「そうかもな〜。私と[兄貴]は全然似てないし〜」
驚いたような顔をして、雄吾は私の顔を見た。
「意外と異母兄妹とかだったりして?」
雄吾のその問いに、私は一瞬返答に困った。
「……さあね。今度[兄貴]に会ったら聞いてみな」
あるわけないと思いつつ、私はそう答えていた。
そしてまた私たちは歩き始めた。
ミシェルがいる……間違いなくこの街のどこかに……
忘れようとしていたあのことを、思い出さざるおえない状況が近付いている。
[いずれ来るであろうもの]が近付いているのか……
作品名:~双晶麗月~ 【その1】 作家名:野琴 海生奈