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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その1】

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 学校の門を出て、海沿いの道をしばらく歩く。そしてその途中で私は立ち止まり、海を眺める。静かな潮風と、夕日を浴びてキラキラと光る海。
 このまま何も考えずに時が過ぎたら……私はそう思った。

「おぅ、そういえばさ、お前んちの兄貴って音楽事務所で働いてるんだって?」
 後ろを歩いていた雄吾が、立ち止まっていた私の横に来て言った。
「えっ!誰から聞いたの?」

 私は驚いていた。
 今私は一人暮らしをしている。元々この街に住む雄吾は、高校入学と同時に越してきたばかりの私の兄を知るはずもなく、当然私に兄がいると雄吾に言ったことはなかった。そして私の兄は、音楽事務所になんて働いていないはず。

「うちの姉貴が言ってたぜ。どうも大通りを曲がったとこにある小さなビルに入ってったのを見たらしいんだけど、看板見たら[なんたら音楽事務所]って書いてあったってさ」

 雄吾は、両親と2つ上の姉さんと一緒に暮らしている。もちろんここに来たことのない私の兄を、この辺りの人が見たとは思えない。雄吾の姉さんは誰を見たのか……

「……ふ〜ん。知らな〜い」
 私はそう言うしかなかった。

「知らねぇの?オレさ、お前んちの兄貴に聞いてみようかな?『オレどうですか』って」
「ハハッ。聞けるもんなら聞いてみなよ」
 兄貴がホントにこっちに来てるならだけど。

「でもさ、オマエの姉さんもさ、名前くらいきちんと覚えとけよ。なんだよ、[なんたら事務所]って」
「そんなこと姉貴に言えって。オレは姉貴にそう聞いたんだよっ」
 雄吾はごまかすように頭をポリポリ掻いた。

「てかさ、あんたのギターって聞いたことないけど、どうなの?」
「すげぇ上手いぜぇ〜。聞いてみるか?」
「やだねっ」
「ぶっ!即答かよっ!」

 雄吾はいつになくおしゃべりになった。ギターはどうだのバンドがどうだのと、ずっと話していた。私は聞いてるふりをして、うんうんと相槌(あいづち)を打った。