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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その1】

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「別にぃ。好きなものは好きなんだよ。悪いかよっ!」
 私は近づいた雄吾の顔を押しのけ、ちょっとムッとして言った。
「だいたいさ、オマエに理由言ったところでこの感動が伝わるとは思えんしな。『海好きに悪いヤツはいない』って言うの知らないのかよ」
「ハッ!そ〜んなこと言わねぇよ。それを言うなら『ギター好きに悪いヤツはいねぇ』っつーの」
「ハァ〜?それって誰のことだよ?」
「オレ!オレ〜!オレサマに決まってんだろ〜!」

 雄吾は体育会系なガタイしてて、ギタリスト目指してる。運動神経がいいからそっち系目指せばいいものの……。重いカバンを持つ雄吾の手も、指が短くてゴツゴツしている。この手で弾けるんだろうか?

「冗談だろ〜?ギタリストには到底見えん!」
「オレは生まれつきギタリストなんだッ!」
「ははは!ムリムリ!絶対向いてないって!オマエにゃ無理だ〜ッ!」
「うるせ!向き不向きは関係ねぇっつーの!」
 そんな会話をしながら、私たちはしばらく歩いていた。

 それから数分歩いた後、雄吾が突然何かに気付く。
「あ〜っ?なんだあれ?真っ赤じゃん!」
 雄吾が指を刺したその先には、短い草がうっすらと生えている空き地があった。
 家が2〜3軒建ちそうなくらいの広さで、砂利がひいてある。道路に面した場所に[売り地]と書いた看板が立つ。そしてその周りを囲む、高い塀ばかりの家。
 特に目についたのは、その空き地の一角の、不自然に散らばるたくさんの赤い花びら。

 私は一気に血の気が引いた。
 そしてすぐさま半年前のあの情景を思い出した。
 あれは私が生まれ育った街で起こった出来事。ここはあの街から車で30分のところにある隣の市。なぜまたここに花びらが?

「ははは………。花が散ったんだ〜。こんな真っ赤な花咲いてたんだな〜」
 私は適当に思いついたことを言った。きっと雄吾にあの話をしても信じない。
「ばかやろう!こんな花咲いてなかったって!」
 雄吾のその言葉にドキリとした。
 なぜなら、その空き地には木すらなく、草ばかりで花など一つも生えていなかったからだ。