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約束~リラの花の咲く頃に~・再会編Ⅱ

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 淑妍の面に意味ありげな笑みが浮かんだ。
「そして、ここからが本題です」
 意外な言葉に、莉彩が眼を瞠る。
 淑妍が〝もう一杯、お茶のお代わりをお願いできますか〟と湯呑みを差し出した。
 二杯目のお茶を淹れている莉彩の耳に、更に仰天させる言葉が飛び込んできた。
「孫大監は、あなたが近い将来、王子をお生み奉ったときの何よりの後ろ盾となる」
 あまりに動揺したため、莉彩は手にしていた茶碗をその場に取り落としてしまった。
「淑妍さま、私は、そのようなつもりはありません。王子さま(ワンジヤニィ)を私が産むなんて、そんなことがあるはずもありません。私は殿下のお側に上がる気はないのです」
 落とした湯呑みから茶が零れ、莉彩のチマが濡れた。見る間にひろがってゆく染みを見ながら、莉彩は首を振る。
「あなたは殿下が嫌いなのですか?」
 ズバリと問われ、莉彩はうつむいた。
「私は、私は」
 莉彩は涙が零れそうになった。小さく息を吸い込む。
「尚宮さまも私がこの時代の人間ではないことは、既にご存じなのではないのですか?」
「そなたの身の上は殿下より直接お聞きしています。されど(ホナ)、それがどうしたというのですか」
 淑妍の声音は一切の感情を感じさせなかった。
「私は時間旅行者で、たまたま、この時代に流れ着いただけの人間です。そんな私が国王殿下であるあの方のお側に上がることは許されません。遠い未来に生きる人間が、過去の既に定まっている歴史に拘わることはできないのです。私がもし殿下の側室になれば、本来、この時代にいるはずのない女が殿下の後宮に存在することになってしまう」
 うつむいた莉彩の眼から大粒の涙がしたたり落ち、床にひろがったチマの上に新たな染みを作る。
「綺麗事はお止めなさい」
 ふいに厳しい声で