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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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ビル街の月

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この辺りは休日ともなると全く人気が無くなる。
 ましてや日曜の夕方となればなお更だ。
 都会のオフィス街。
 俺は日曜だというのに週末に持ち上がったシステムトラブル処理の為、こうして土日を潰して会社の為に働いていたのだ。
 もっともトラブルの原因を作ったのも俺で、土日を潰したのは性格の悪い上司に命令されたからの事で、責任感とか使命感とかでは一切無いのだが……。

 だが、ようやくこの時間になって問題のバグをやっつける事が出来た。
 関係者には電子メールを送ったので明日の月曜日は十時に出社しても大丈夫だろう。
 仕事を終えた時にはまだ早いと思っていたが、辺りは既に薄暗くなって来ていた。
 所々を四角く抉られたビル街のまだ青さを少し残している空に、白い月が薄っすらと浮かんでいるのが見える。
 仕事が終わった開放感。酒でも飲んで帰りたかったが、店が開くまでにはまだ時間がありそうだ。
 時間になったとしてもこの辺の店が日曜に営業しているのかは分からなかった。
 閑散としたビル街に俺の足跡が反響する。
 日曜でもなければ気づきはしない事だ。

 俺はふと足を止めた、二、三ブロック先の辻に大きな猫の姿が見えたのだ。
 しかし遠近感にどうも違和感を覚えて目を凝らして見ると、そいつは俺に気付いたのかこちらを向いた。
 と同時に重量感を伴なって疾しりだしたそいつは猫などではなかった。
 濃いオレンジ色の巨躯に鮮やかな黒の縦じま――。
 その虎は素晴らしい脚力で一気に近寄ると、数メートルも先から跳躍し俺に襲い掛かった。
 俺は、あまりのばかばかしさに身動き出来ずにいた。もしかすると心臓さえ凍りついていたかも知れない。
 しかし、その俺に息が掛かる程に近づいた時、虎はひらりと身を翻し音も無く俺の背後に着地した。
作品名:ビル街の月 作家名:郷田三郎(G3)