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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十二の二  【冠】



【冠】は、「冖」(べき)と「元」、そして「寸」が組み合わさったもの。
これで廟(びょう)の中で、髪を結った頭(「元」の意味)に、手の意味の「寸」で冠を付ける形だとか。

ここから男子の成人式の儀礼を意味するそうな。
また頭上にのせることから「最上のもの」、「すぐれる」の意味ともなる。

こんな崇高な【冠】、それを八つも頂いているヤツがいる。
それは「ヤツガシラ」、渡り鳥だ。
大きさは三〇センチ弱、頭に扇の冠羽を被ってる……生意気なヤツだ。

この「ヤツガシラ」、北方で繁殖した後、冬季南方へと渡る。
その途中、たまたま日本に立ち寄ることがある。
そんな時、人たちはまるでアイドルに遭遇したかのように、そいつを写真に収めようと大騒ぎとなる。

そんな「ヤツガシラ」、戦後その一羽がたまたま皇居に飛来した。
その時、昭和天皇は皇居内の畑で芋ほりをされていたが、そやつを見つけられたのだ。
そして侍従に、すぐ双眼鏡を持ってくるように命じられた。

しかし、侍従は何のことかわからない。
思わず「芋を掘るのに、なぜ双眼鏡がいるのですか?」と聞き返したそうな。
こんなほのぼのとしたエピソードがある。
昭和天皇までもがあわてられた「ヤツガシラ」、一度出会ってみたいものだ。

とにかく【冠】を付けたヤツから目が離せないのだ。