漢字一文字の旅 二巻 第一章より
九の六 【鶯】
春告げ鳥の【鶯】(うぐいす)、冠は「栄」であり、ぐるりととりまく様を表し、首まわりを輪の羽模様がとりまく「鳥」だからだとか。
と言われても、【鶯】を見掛けることはない。
【鶯】は臆病な鳥で、藪の中で虫を食べ、めったに人前にはその姿を見せない。
だが遠く方でホーホケキョと美声で鳴き、色は鶯色。
この鶯色は灰色がかった緑褐色だ。
しかし、ここで問題が。
同じ春告げ鳥にメジロがいる。
この鳥は花の蜜が大好物。特に梅の花。
そして大胆で、そう逃げない。
色も抹茶色に近く、鮮やか。これにどうしても目が取られる。
そのためか、ここに間違いが起こる。
ホーホケキョと美声が聞こえてきた。
窓から梅の木を見ると、そこに抹茶色の美しい鳥がいる。
「梅に鶯、ホーホケキョ」
人はこんな言葉でついつい春を愛でてしまうのだ。
しかし、ようく見てくだされ、それは……メジロだよ!
【鶯】は藪の中。
梅にいる鳥は花の蜜をついばみ、押しくらまんじゅう状態でしょ。
そう、目白押しなんです。
えっ、花札に梅に鶯、抹茶色の鳥が描かれてるのに?
ブー、これも間違ってま〜す。
とにかく【鶯】、こんな間違い探しも、ホーホケキョと軽く終わらせましょう。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊