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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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五の三  【刻】



【刻】の左部の「亥」は獣の形、その獣の死体を「リ」(刀)で切り解く。
これが「きざむ」という意味だそうな。

そこから獣の死体の肉や皮を削り取ったりすることから、きびしい/むごいの意味にもなる。
そして「刻苦」や「深刻」の熟語が出来た。

また器を刻み、時を計り、「時刻」となった。
うーんなるほど、うまいこと考えたものだと感心するしかない。

今、手元に、二つのZIPPO(ジッポー)のライターがある。
随分と前だが、ベトナムのハノイに行った時に手に入れた。
それらはベトナム戦争時の米兵の遺品だ。

そして、そこには彼らの叫びが刻まれてある。

一つのライターには、
「I've spent my time in hell and I'm not sorry about that.」と。
要は、「私は、これまで地獄で過ごして来た。だけど、それを残念には思っていない」と叫んでいるのだ。

もう一つには、
「Yesterday is history, tomorrow is a mystery,today is the golden age between.」
つまり、「昨日は歴史、明日は神秘、そして今日は、その間で金のように輝く時」と訴えている。

米兵たちは戦地で、一番手元にあるZIPPOのライターに、心の叫びを刻んだ。
その苦いが、ひたすらな想いがひしひしと伝わってくる。

出来ることならば、遺族に戻したい。
それらの想いの込められたZIPPOのライターを。

いずれにしても、【刻】という漢字、いろいろなものを刻んでくれるものだ。