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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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五の二  【望】



【望】という漢字、つま先立つ人を横から見た形「壬」、その上に大きな瞳の「臣」(目)との組み合わせだ。
それに音符の「亡」を乗せ、遠くの方をのぞみ見ることだそうだ。

そこから眺望/遠望などの熟語が生まれ、さらに望郷/人望などの熟語へと発展する。
だが、そうは言っても、一番多く使われる熟語は「希望」だろう。

ギリシャ神話にある。
人類の最初の女性・パンドラは、好奇心から世の中の災難や不幸が詰まった「パンドラの箱」を開けてしまった。
世の中は不幸に。しかし、箱の底にひとかけらのものが残っていた。
それが「HOPE」だ、つまり『希望』。

しかし、この『希』という漢字、「巾」と「交わる」からなり、すかし織りの布。
めったにない珍しい意味。
この解釈からすると、「希望」はめったに実現しない【望】となってしまう。

これじゃ、いやはやたまったものじゃない。
したがって、「まれ」には「稀」の漢字が使われるようになった。そして『希』には、「ねがう」の意味を含ませたとか。

こんな御都合主義、まあ目くじらを立てずにとなるが、
ここで提案。
次のような『きぼう』もあるかなと……ちょっと思ってしまったわけでして。

貴望 : 貴女の望み、何でっしゃろ? モチ、お金持ちになることよ、答えは決まってる。
輝望 : 輝く望み、それは最低1カラット以上……ですって。

奇望 : 奇妙な望みって、決して達成できない、されど……ダイエット願望。
季望 : 季節変わりの望み。それって春を愛で、夏に弾け、秋に憂い、冬に熱燗でキュッ。

危望 : 危ない望みって、愛人とねんごろに……危なすぎるけどね。

こんなこと考えるって、
【望】という漢字、まさに絶【望】的かな?