漢字一文字の旅 二巻 第一章より
四の一 【神】
【神】、シンと音読みするが、元々の字は「申」だとか。
「申」は稲妻の形。そして天の神の威光をあらわす。
そんな【神】、四つ集まれば「四神」となる。そんな神たちが今も京都を守ってる。
一千二百年前、桓武天皇は長岡京へ遷都したが、疫病が流行り失敗した。
その後、起死回生でもっと吉相の地はないかと探し、やっと見つけた。
それは「四神相応の地」、つまり三方が山で囲まれ、南に大きく開けた山背国(やましろこく)だった。
西暦794年、桓武天皇は長岡京から遷都。そして平安京、今の京都を開いた。
この四神とは、青龍/白虎/朱雀/玄武(亀のようなやつ)。
そして配置は次の通り。
東:青龍 … 鴨川
西:白虎 … 山陽道、山陰道
南:朱雀 … 巨椋池(おぐら池:今は埋め立てられて存在しない)
北:玄武 … 船岡山、鞍馬山
その上に、貴船神社/比叡山/御所と結んで作った三角形で結界を張った。
要は、結界の中は……洛中となり、そこは聖なる地となる。
さらに念には念を入れて、鬼門は東北の位置。そこに比叡山の延暦寺を建立した。
平安京の国会議事堂にあたる「大極殿 」(だいごくでん)。そこから朱雀大路(道幅85m)が羅城門(らじょうもん)まで一直線に貫かせた。
その羅城門は、いわゆる芥川龍之介の「羅生門」。
この羅城門が結界(けっかい)の一つとなっていた。
当時の常識としては、その外は……今風に言えば、ゾンビが彷徨う魑魅魍魎の世界。魔物、妖怪たちが好き放題にうじゃうじゃといた。
都を守るため四神を配し、万全を期して結界を張り、都は守られた……はずだった。
しかしだ……抜け穴があった。
その一つが「一条戻り橋」。結界の外と中を繋ぐ橋だ。
そのためか安倍清明とか、他の陰陽師たちが活躍し、やたらと神社が造られてきた。
京都は魔界都市。
今も抜け穴を通って、魔物/鬼/怨霊がウロウロしている。
だから京都は……魑魅魍魎と共存共栄の町なのだ。
【神】、とにかく語り尽くせない漢字なのかも知れない。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊