漢字一文字の旅 二巻 第一章より
十四の六 【麦】
【麦】、上部はムギの形であり、下部は足跡を逆さにした形。これで麦踏みしている意味だとか。
こんな【麦】に「酒」が付けば「麦酒」……ビールだ!
「ビール1杯と命の保証さえ手に入れることができたら、名誉なんかくれてやってもいい」
シェイクスピアは作品「ヘンリー五世」の中で、主人公にこう言わせた。
うーん、確かに。
鮎風には名誉なんてないが、1杯のビールで命は蘇生する。
夏の暑い日はとにかくビール、グビグビと。美味い!
ビールは発芽した大麦の麦芽をビール酵母で発酵させて作られるとか。
そんなビール、慶長八年(1613年)に長崎の平戸に入り、それから徳川吉宗に献上された。
その味は……決して美味しいものではなかったそうな。
それでも長崎の出島で醸造され、各地に広まって行ったようだ。
そして最近ブームになっているのが黒ビール。特に競馬場に行けば、やっぱ黒でしょ! となる。
焙煎され、少し焦げた味。
それが脳を活性化させ、ドーパミンが溢れ、勘が冴え渡る。
万馬券的中も……、そんな気にさせてくれるから不思議だ。
事ほど左様に、【麦】という漢字、「酒」を従えて、
夏に、遊びに、ギャンブルに、なくてはならない飲み物になったのだ。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊