漢字一文字の旅 二巻 第一章より
十四の四 【綺】
【綺】、斜めの模様が綾織りされた光沢ある絹織物のこととか。
これに薄絹の意味のある「羅」が付いて『綺羅』となる。
いわゆる今流行りの「キラキラ」だ。
キラキラネーム、注目を浴びている。
希空に澄海、琥珀、結愛、心美とあり、そして心愛、大翔
これらが人気があるとか。しかし、読めませ〜ん。
答えは
のあ、すかい、こはく、ゆあ、ここみ、ここあ、ひろと……だと。
だが驚きだ。
ほとんどがPCでひらがなから漢字変換できた。
できなかったのは「のあ」と「すかい」だけ。後は一発変換、すでに市民権を得てるということか。
そして、こういうのをDQNネーム(ドキュン)とも言うらしい。
さらに範疇を広げれば、オノマトベ(フランス語)。
これは猫をミャオミャオと呼ぶ擬音語、他に擬態語、感覚語などを総括している。
つまりキラキラという言葉、それはオノマトベの一つになる。
そして、こんなのを普段から使えば、なにか時代の最先端を走ってるような気分になってくる。
が、そんな舞い上がってる気分に水を差すようで申し訳ないが……。
「見上げたまへれば、 人もなく、月の顔のみ きらきらとして」とか、「御容貌(かたち)など……隈なくにほひ きらきらしく」と。
これは一千年前の源氏物語の一説。
まさに紫式部はキラキラを多用していたのだ。
そしてキラキラネームもてんこ盛り。
光源氏を筆頭とし、藤壺中宮に夕顔、花散里に末摘花、そして浮舟に匂宮。
このように一千年前にすでにキラキラネームだらけだったのだ。
綺羅綺羅の【綺】という漢字、神代の昔からいろいろなものを輝かせ、そして今も衰えないパワーを持っているのかも知れない。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊