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てっしゅう
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「哀の川」 第三十五話

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東京駅に間もなくひかりは到着した。降りたホームですぐに実家へ電話をかけた。

呼び出し音しか聞こえない。多分病院で付き添っているのだろう。このままとんぼ返りするしかないと思ったが、店のこともあるから、一旦帰って、張り紙をしてから、再び万が一に供えて下着を余分に持って、東京駅に向かった。電話をして、直樹と同じ電車で待ち合わせた。

「姉さん!ここ!」直樹の声がした。
「ねえ、どうしたんだろう?母には連絡がつかなかったわ」
「ボクもかけたけど・・・同じだったよ。病院の名前は聞いたから、そちらへかけてみようか?迷惑かな」
「多分取り次いではくれないよ。このまま行くしかないわね」

隣同士の席で直樹と杏子は座った。幸せな気分も父への心配で、不安に変っていた。直樹の腕に自分の腕を絡めて、両手で強く挟みこんでいた。
「父さん、大丈夫かしら・・・万が一があったら、どうしよう・・・」
「姉さん、今は無事を祈るだけだよ。考えても始まらないし」
「そうね、直樹はしっかりするようになったね。逞しく感じる。私は、自分の弱さが出てきた・・・佐伯さんにも言われたけど、本当は何も出来ないダメな女だったのよね・・・強情だけで生きてきたように思うの」
「姉さん・・・そんなことはないよ。才能あるし、本当は優しいし・・・それに年齢を感じさせないほど若く綺麗だよ。自信持って!」
「直樹・・・何故、何故、あなたは弟だったの・・・」もう言葉にはならなかった。