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てっしゅう
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「哀の川」 第三十五話

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照明を落とした。バスローブを脱がせた杏子の身体は佐伯が想像していたより均整の取れたきれいなものだった。急に強く性欲が現れて、佐伯は夢中で貪った。終わりを告げたとき、杏子の目には涙が光っていた。この人で良かった・・・幸せになれる・・・そんな感情が身体を重ねて知らされた。

翌朝、二人は新しい住まいを探しに少し不動産屋を回った。お店の近くが便利だと、元町周辺で何件か見せてもらった。その日は気に入る部屋がなく、彼の住まいに戻って泊めてもらった。東京へ帰る日、再会の約束をして、新神戸で別れた。ひかり号が東京駅に着く頃直樹から電話がかかってきた。

「もしもし・・・姉さん?うるさいね・・・新幹線の中?」
「ええ、そうよ、デッキに出ているから、良く聞こえないわ」
「手短に言うよ!父さんが、さっき病院へ担ぎ込まれたんだって!母さんから電話が来たよ。姉さんの番号知らなかったから、僕に電話くれたんだよ」
「ええ?なんて?父さんがどうしたって?」
「倒れたらしいよ!詳しくは解らないけど・・・」
「倒れたって!どういうこと?」
「解らないよ、母に聞いてみて。ボクも用意して神戸に向かうから」
「解ったわ、電話してみる」