帰り道
「ご注文はお決まりですか?」
まだメニューも置かれたばかり、決めかねる。
「お決まりになりましたら、ボタンでお知らせください」
にこやかに奥へと下がって行った。
二部用意されたメニューだが、女は開こうとしない。
男が、開いて自分と一緒に見るように促した。
「じゃあ、これでいいんだね」
男は、ボタンを押し、オーダーを入れた。
注文のものが出てくるまでは、沈黙のままの時間が流れた。
「お待たせ致しました。プチキャラメルパフェは?ストロベリーミルフィーユサンデーは?」
テーブルに置かれたそれらを見て男は苦笑した。
「この時間に食べるようなものじゃないですね。……ねっ」
そう言って女は目を細め微笑んだ。その顔に男も笑った。
「そうだね」
「でも、美味しい。あ、お腹空いていたんじゃ?これで良かったのですか?」
「そうでも言わないと、キミは来ないでしょ」
「ごめんなさい」
男は、先日の事を聞きたくなった。
「どうして?疲れたにしても、どうして車に寝ていたの?」
「……好きだって言われたから」
「誰が?誰が誰に?」
「あなたが、私に」
男は天井の端から端まで見渡すように視線を泳がせ、女に戻した。
「まさか!?の冗談だよね。初めて会ってさ」
女は首を横に振った。