帰り道
「ほら、立って。行くよ」
女の腕を掴み、立ち上がらせたが、女は首を横に振る。
「ほおっておけるか。別に連れ……込もうと思ってないから……」
見上げた女の視線に言葉が詰まった。
「この先に 24時間営業のファミレスができたからとりあえず…とりあえず腹も減ったから付き合え」
男は、腕を離さないまま、車に戻ると、後ろのスライドドアを開けて乗せた。
運転席に乗り込むと、すぐさまロックをかけた。エンジンをかけ、その場を離れた。
走り始めれば、オートロックはかかるが、面倒ついでの面倒はもう面倒だと男は思った。
(やれやれ、とんだことだ)
バックミラーで後部座席の女の様子をちらりと見た。
女は、うな垂れたままだったが、時折、窓の外も見ている様子だ。
「ほら、着いたよ。降りるくらいはできるでしょ」
男は、駐車し、エンジンを切るとドアロックを解除した。
男も車を降り、車の前方で女を待った。
女を前に押しやるように、ファミレスに入った。
さすがにこの時間は閑散としている。どこにでも座ってくれとばかりに席は空いていた。
店の人が案内してくれたのは、店内の中ほどの場所だったが、壁際を頼むと笑顔で応対してくれた。