アイラブ桐生 第4部 54~55
しかし、順平さんのお店で使うのは、
国内産の活けクルマエビと限定されています。
下ごしらえには、繊細な細工と行きとどいた神経を使います。
丁寧に殻を剥くことから下ごしらえが始まります。
傷をつけないように尾がついている最後の部分までをとりのぞき、
その先は残します。
エビの背中には、通称「背ワタ」と呼ばれる部分があり、
これは中長管(消化管)と呼ばれ、異臭のもとになるので、
必ず取り除いておきます。
頭のほうから2節目にあたる背中側に、
横から竹串を入れ、引き上げるようにしてこの中長管を取り除きます。
少しでも残ると、違和感や微妙な異臭の原因になりますので、
慎重に取り除くことが大切です
揚げた時の見た目の大きなポイントが、
ぴんと張ったエビの尻尾です。
エビの尾の部分を揃えて尾の先を、端の形に沿って
少しだけ切り落とします。
次に尾の部分を包丁の先でしごいて、内部にある水分を
綺麗に押し出しておきます。
こうしておくことで形よく、きれいな赤色に仕上がります。
曲がり具合を
調節するために、包丁を入れ、腰を折ります。
ポイントは、尾の付け根ちかくの腹側に2か所、深さが
1/3から1/2ほどの切り込みをいれます。
大きさにもよりますが、頭側の近くにも同様の切り込みを
入れることもあります
問題はこの先です。
この処理だけでは、揚げた時に曲がりが発生をします。
それを上手に防ぐために、包丁を入れたあたりでエビを、
背中側へ折るようなつもりで曲げたおきます。
慣れてくると包丁を入れず腰を折るだけでも、
綺麗に揚がるようになります
ゴボウや、レンコンなども、
京都では天ぷらとして良く使われる材料です。
特にゴボウは食物線維が豊富で、よく使われますが、
その下処理は野菜の中では、
けっこう面倒な部類にはいるようです。
順平さんのお店では泥つきのゴボウしか使いません。
圧倒的に鮮度が違います。
表面の泥を綺麗に洗い流す必要がありますが、この時に
細心の注意が要ります。
表面を覆うごく薄い皮を損なわないように、丹念に洗いあげます。
こすりすぎて、薄皮をむいてしまうとゴボウ独特の
風味が損なわれてしまいます。
ゴボウのおいしさは、
この薄皮と中身の隙間に詰まっています。
泥は完ぺきに落としながらも、薄皮はしっかりと
残なさければなりません・・・
繊細な配慮と、丹念な仕事が必要とされます。
ゴボウはアクが強く、すぐに変色をするため、
つねに流水にさらしておいて、この変色を防ぐ必要もあります。
ゴボウの下処理は、流水が基本で手早さと変色防止のための
時間との戦いです。
揚げる直前まで、きれいな水に漬けこんでおく場合もあります。
レンコンは、包丁をつかって表一枚の皮むきをした後、
酢水につけてあく抜きをします。
さらにそのまま酸性の水に漬け置いても鮮度は保てます。
作品名:アイラブ桐生 第4部 54~55 作家名:落合順平