神様ソウル2 -神崎君の恋人-
「行っちまった」
「……区切りってやつは付けられたの?」
「あぁ、付けた付けた」
「まったく、勝手なことして。何もなかったから良かったものの」
「悪かったな。色々手間取らせちまって」
「謝らないでよ。何もなかったからいいって言ったじゃない」
「はは。じゃあありがとうだな」
「む……どういたしまして」
テミスは腕を組んで険しい表情でそう答えた。多分照れ隠しだ。なんとなく僕にはそう確信した。
「最後さ、舞の体温を感じたよ」
「抱き合ってたな」
「今までみたいな真似事じゃなかった。ちゃんと舞がそこにいたんだ」
「…………」
神崎は夜空を見上げて笑った。満足げだった。
「課長、何笑ってるんですか」
「いや、なんでもない」
「ふん。とにかく一件落着です。帰りましょ」
「そうするか」
「あーお腹すきました。課長、私今日の晩ごはんはハンバーグを希望します」
「いつの間にかうちで夕食を摂ることが決定している……」
「あれ、神崎?」
歩き出した僕達をよそに空を見上げて立ち尽くしたままの神崎。
「あ、あー。俺、もうしばらくここいるから」
「えー課長の料理美味しいのにー」
「……今日は一人で居たいんだ」
「ロマンチスト気取りが」
「おい聞こえてるぞ」
「わっかりましたよー。それじゃ私達は帰るからね」
「あぁ。今日はほんとにありがとな」
「いえいえ」
「里見も。ありがとな」
「え。なんもしてないよ、僕」
「そんなことない。色々世話になったよ。それに舞がお前のこと話してた。感謝してるって」
舞が。
僕は黙って頷いた。今更になって悲しみが込み上げてきて、口を開いたら情けない声が漏れてしまいそうな気がしたからだ。
「それじゃ、また学校でな」
今にも泣きそうな笑顔を湛えた神崎を置いて僕らは森を後にした。
作品名:神様ソウル2 -神崎君の恋人- 作家名:くろかわ