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神様ソウル2 -神崎君の恋人-

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 「そろそろ行きますか」
 「ん、どこへだ」
 「藤沢舞のところへ決まってるじゃないですか」
 「今からかよ。もう夜だぞ……」
 「この時間まで待たないと神崎彰吾と鉢合わせちゃうじゃないですか」
 「眠い……」
 「課長の睡眠時間と世界の安定、どっちが大事かそのちっちゃい脳みそで考えてみてください。シャーペンを重要な臓器にねじ込みますよ?」
 「わかりましたよ……」
 こいつなら本当にやりかねない……。

 「さて到着です。相変わらず陰気くさいところですね」
 ずんずん進んでいくテミス。
 「ふむ。この辺だったか。神崎はいないみたいね。舞ちゃんいるー?」
 「テミスさん、ヒロトさん」
 木の陰から舞が顔を出した。
 「調子はどお?」
 「上々ですよ。こんな時間にどうしたんです?」
 「特に用があったわけじゃないんだけど暇だから来てみたんだけど。幽霊ってそんなに見れるもんじゃないしね」
 「そうですか。私も夜は暇ですし、話相手がいてくれるのはありがたいです」
 「にしてもちょっと居心地悪いわねここは。腰を下ろせる場所に行きたいわ。課長の部屋に行きましょうか」
 まず俺に了解をとれよ。
 「ヒロトさんの部屋?あの、私ここから動けないんですけど……」
 「動けない?」
 僕が聞くと、舞は自分の寄りかかっている木をさすった。
 「私、この木の下あたりで死んじゃったんですけど、たぶんそれが原因みたいです。彰吾くんは自縛霊って奴なのかなって言ってました」
 「へー。テミス、なんとかできないのか?」
 「誰に聞いてるんですか愚かな人ですね。ちょっと待ってなさい」
 テミスはそう言って木に手をあて、ぶつぶつと何かをつぶやき始めた。
 「そういえば、舞っていつからここにいるんだ?服装から考えるに結構昔の人?」
 「あ、そんなことないですよ。ちょうど十年くらい前ですかね。死んだのがちょうど夏祭りの時期だったからこの姿だったんですよ」
 舞は浴衣の袖をひらひらとはためかせながら言った。
 「夏祭り。この木の下で、か……」
 「自殺とかじゃないですよ!誰かがいたずらで作った落とし穴に落ちちゃったんです。その晩に運悪く大雨が降って……寒いー、お腹すいたー、ってずっと考えてて気づいたらこの姿です」
 「へー」
 「はいできた。行くわよ」
 「え、行くわよって」
 「とりあえず木から離れることができるようになってるはずだから。課長の家に行くわよ」
 森の外へ歩き出したテミスのあとに続いて恐る恐る足を踏み出していく舞。しばらく歩いた辺りで突然表情をパッと輝かせた。
 「あ、すごい。いつもこれくらい木から離れると胸が苦しくなってくるんですよ。すごいすごい」
 「ほらほら急ぐわよー」
 「はい!」
 舞は飛び跳ねるように駆け出した。