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最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』

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「今、この円の内側にだけ特別な結界を張った。この結界だったらドラゴンでも嗅ぎつけられないだろう。」ジュダが言った。
「…でも何でおれだけこっち側にいるんですか?」アレンが尋ねた。そろそろ、この家族にはちゃんと説明するっていう習慣をつけてもらいたい、とアレンは思った。
「決まってるだろう。これから火の魔法の練習はここでするんだ。」まるで何でもないことのように、ジュダはさらりと答えた。アレンに棒きれを投げると、ジュダは続けた。「早速だが、始めよう。私は火の魔法こそ使えないが、魔法がどんなときに発動するのかは分かっている。難しいかもしれないが、アレン、これは大切なことだ。」
アレンは投げられた棒きれを見つめた。これを燃やせって言うのか?「でもどうやるのか覚えてないんです。たった一回きりだったし…習ってもいないことをできるわけ、ないです。」
「覚えてるわけないんだ。君は無意識だったんだから。」ジュダはそういうと、自身のポケットから、どこか見覚えのある汚らしい木箱を取り出した。「ディディーはこの『無警戒の箱』を持っているんだ。これは閉じている時はただの箱だけど、何かの拍子で開けられると、箱の近くの人々の心の一番奥の警戒を解いてしまうんだ。ディディーはこれを煙草入れとして使ってる。」
そういえば、とアレンは思いだした。見覚えがあったのは、昨日初めてディディーと会ったときに、ディディーが煙草を取り出したのがこの箱だったのだ。
「これはアシャールの根っことフィルナ(植物の一種)の幹でできているんだが、フィルナはもう何十年か前に絶滅してしまっていてね…これほど状態がいいのはなかなかないんだ。」ジュダは円の内側に入らないように気をつけながら、アレンによく見えるように箱を掲げた。「興味深いことに、ほら、箱の上部に不思議なデザインが施されている。文字みたいなんだけど、この国の言葉とは違うようなんだ。ということは秘密の民族でも存在したのか?もしかしてこの国は閉ざされてなんかなくて、違う国の何者かが存在したのか?…おっと、すまない。歴史のことになるとあつくなってしまうんだ。」
照れくさそうに笑うジュダに、アレンは「構わないですよ」と言った。実際、ジュダの話す歴史を聞くのは案外面白かった。ジュダはすぐにまじめな顔つきに戻った。