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最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』

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テーブルには、トウモロコシのスープ、『百麦』の薄パン、そしてティマ(ヨーグルトの様な発酵食品)と、ロウアーの家庭料理ばかりが並んだ。どれも作りたてのいいにおいがした。
「さ、遠慮しないで食べなさい。」とジュダが言ったので、アレンは意気揚々とスプーンを手に取った。
ティマを一口食べると、アレンはまるで自分がロウア―ウェストの実家にいるように感じた。マチルダは、いつも朝早く仕事に出かけるアレンのために、ボウルいっぱいのティマを用意してキッチンで待っていてくれた。寝坊しがちなアレンだったが、それを食べるために肌寒い朝を乗りきっていたのだ。
アレンはそっとスプーンをテーブルに置いた。ティマはおいしかったが、のんびり朝食を食べていられるような気分ではなかった。
「どうかした?」ジュダが尋ねた。
「ジュダさん、俺、ここでゆっくりしてていいんでしょうか。」アレンがぽつりと言った。「早く逃げないと、ここも攻撃される…早く俺が出て行かないと。」
アレンのあまりに緊迫した表情を見て、ジュダも手に持っていた薄パンを皿に戻した。
「そうだな、アレン。そんなに時間はない。」ジュダが口を開いた。「でも焦ったっていいことはない。君はこれからいくつも重大な決断をしないといけないんだからね。」
「俺がここに長くいればいるだけ、みんなに迷惑がかかる…俺一人が、どこにもとどまらないで、ずっと逃げてれば、いつかは将軍もあきらめるんじゃないんですか?」アレンはうつむいた。「俺はここも灰だらけになってほしくない。」
アレンの頭の中で、昨日の歩兵たちの会話が繰り返される。
―ロウア―ウェストはもう埃だらけだぜ。
アレンのギュッと握ったこぶしががくがくと震えた。ああ、自分はなんてことをしてしまったんだろう…。
ジュダはふうとため息をついて、席を立った。そしてつかつかとアレンに近寄ると、うつむいていたアレンの顔を持ち上げた。
「今逃げてどうする?」とジュダは問いかけた。「君は自分のことを何も知らないし、基本の火の魔法の使い方さえ知らない。それがどんなに危険なことだかわかるかい?」