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最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』

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さっき入れておいた薪の上に火をつけたマッチを放ると、薪はぱちぱちと音をたてて燃え始めた。ストーブの前にしゃがみこんで、アレンは火が燃える様子をじっと見ていた。自分はこんな火をつけたり操ったりもできるのか、とアレンは自身の力に半ば感心した。「…どうやるのかは分からないけど。」とアレンは呟いた。
同時に、こんなにのんびりしていていいのだろうかと不安になった。昨日遭遇したアッパーの歩兵たちはもう将軍に通告したに違いない、『魔法使いのガキを見た』と。ゲートフォレストが入りくんでいたのが幸いだが、アレンがロウア―サウスにいるということは、アレンが走り去った方角を見ればすぐにわかったはずだ。だとすれば、もう相手はすぐそこまで来ているのかもしれない…。
ジュダとディディーに迷惑がかかるのだけは避けたかった。既に自分は多くを犠牲にしてしまったのだから。
「ここから出ていかないとなぁ…。」
アレンはそう呟いたが、出て行って、どこへ行こうという当てもなかった。一か所にとどまる気もなかった。いずれは逃げきれずに、アレンは政府軍に捕まって殺されてしまうのだろう。そしてその時本当に魔法使いはただのおとぎ話になってしまうのだ。
そもそも、マチルダがアレンにジュダのもとへ行くように言ったのはなぜだったのか。歴史の授業を受けさせるため?マチルダが自分では言いにくい真実を、会ったこともない伯父から言わせるため?
ジュダの存在はアレンの心の支えになったが、それだけでは政府軍からアレンを守ることはできなかった。
キッチンからリカーのにおいがふんわりと香った。懐かしいそのにおいはすぐにスッと消え去って、あとはストーブからにじみ出る煙のにおいだけが残った。