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最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』

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しばらくアレンはソファの上でぼんやりとしていた。混乱とも動揺とも言えるような、みぞおちにぽっかりと穴があいたような、そんな気分だった。魔法使いがもっと存在したという事実は、むしろアレンをほっとさせた。同時に、自分と同じような人たちが、自分と同じように追い詰められていなくなってしまったという現実は、アレンに自身の運命を伝えているように思えた。
アレンはふと、自分の母親はどんな人だったのか、考えてみた。だが、本当の母親のことを知ろうとしても、教えてくれる人はもういないのだ。自分を彼女から預かったマチルダはきっと何か知っているだろうが、当分彼女に会えるとは、アレンには思えなかった。
アレンはストーブのまきが燃え尽きているのに気がついた。薪を2、3本まとめてストーブの中へ抛りこむと、アレンはマッチを探しに居間を少し歩きまわった。
マッチは、居間の真ん中にある本棚の引き出しに入っていた。アレンはそれを手に取ったて火をつけようとしたが、ふと一冊の本がアレンの目にとまった。昨夜の革表紙の本と似ていたが、一回りほど小さく、一層古いものだった。本の背中には金文字で『古代の地の魔法』と書かれていた。アレンはマッチ箱を置いて、その本を手に取った。