最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』
「君はどうしてもそれを受け入れたくなかった。だから『警戒』していたんだ。けれどそれが一時的に解かれたとき―君は火の魔法を使えるようになった。」
「ちょ、ちょっと待ってください。」アレンが遮った。「わけがわからないです。アレはただの偶然だったんじゃないんですか?」
「偶然と言えばそうだな。これは単なる憶測にすぎない。本当は間違っているのかもしれない。だから一説だとして聞いてくれ。」ジュダは続けた。箱はまだしっかりと閉じられたままだ。「魔法の発動の基本中の基本は、自分がその部族の一員だと認識してそれを受け入れることだ。ロウア―の赤ん坊でも、ロウアーの家で生まれてロウアーとして育てられないと、地の魔法は使えない。それはすべて無意識のうちなんだ。君が君の家族を『家族』だと幼いころに認識したように、君自身の心の奥で『ロウア―』というアイデンティティを受け入れなければいけないんだ。かといって、たとえばロウアーの子供がアッパーとして育てられたからと言って、アッパーの魔法が使えるわけじゃない。体の構造が違うんだからね。だが君は魔法使いだ。火の魔法と地の魔法、両方を使う素質はあるんだ。だが君は今も心のどこかで警戒している―納得はしたけどまだ自分のこととして処理できていないんだ。…違うかい?」
アレンは自分の心に問いかけてみた。頭ではわかったつもりでも、心は受け入れていないということなのだろうか、とアレンは思った。受け入れる―そんなに大事なことなのか?
結界の中がじりじりと暑くなってきて、アレンの額に汗が噴き出し始めた。結界のせいで太陽熱が出て行かないからだろう。アレンはのどが渇いて、暑さに頭がくらくらした。
作品名:最後の魔法使い 第四章 『地の魔法、火の魔法』 作家名:らりー