アイラブ桐生 51~53
なに、罪滅ぼしの旅だと思えば安いもんだと、
源平さんは笑います。
年老いた先方の両親に配慮をして、
結婚式は秋田であげることに決めてきたそうです。
それから先は、お千代と二人で水入らずのまま、気ままに
日本海側から津軽海峡へと回り、ついでに初めての
東太平洋まで眺めてきたと豪快に笑っています。
「お前はんには、ずいぶん世話になった。
旅先でもお前さんのことで、お千代とずいぶんその話がでよった。
ところで、俺も気にしていたことなんだが
お前はんは、この京都に本気で骨をうずめる気があるかいな?
本当のところはどうなんや。」
熱燗を注ぎながら、ストレートに切り出されました。
源平さんの質問は、見事に私の一番痛いところを突いています。
正直に、まだ決めかねています、とだけ答えました。
「やっぱりな・・・
お千代も一番にそれを心配しておった。
お前はんにその気があるんなら、
ここで、京友禅でも金箔師にでも、
なんにでも育ててやることはでける。
まぁその程度の素質は持っているだろうと、お千代も言っていた。
俺もその通りだろうと思う。
しかし正直なところ、俺にはまだ、お前の本気度が見えん。
なんか他に、まだ引っかかっておるんかいな?」
応えようがないので、
まだ目標を探している最中です、とだけ答えました。
そうだろうなやっぱり、と源平さんがため息をついています。
すこしあいだ間が空いて、そのあとの言葉がなかなか出てきません・・・
作品名:アイラブ桐生 51~53 作家名:落合順平