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『喧嘩百景』第5話日栄一賀VS銀狐2

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 一賀はにこっと笑って人差し指を浩己の左目に滑り込ませた。
 「お前、俺が他人の痛みを感じる人間だと思ったのか?」
 浩己は目を見開いたまま笑い返した。
 「感じなくていいさ。嫌なもんだよ」
 一賀の指が眼球を撫でると裕紀がぶるっと身を震わせた。
 「お前たち」
一賀はくるくると指先を回しながら、
「俺の代わりをするつもりなら手加減なんてしてるんじゃないよ」
と眉を顰めた。
 爪が角膜を圧迫する。
 「見苦しい」
一賀はそのままの体勢で浩己の鳩尾を蹴り上げた。
 「…あ」
 裕紀が声を立てる。
 浩己はがくりと膝をついた。
 一賀の指が眼窩に深く差し込まれる。
 片目はとうに捨てている。そんなものは痛まなかった。
 「浩己、止(や)めとけよ」
 裕紀は一賀の手首を掴んで浩己から引き離した。――見てる方が痛い。
「あんたもだ、日栄さん。俺たちのやり方が見てて苦しかったのなら、改めるから」
 裕紀は一賀の濡れた指先を自分の胸元へ引き寄せた。――できるものなら俺たちの痛みを味合わせてやりたいよ。
 「お前は?」
 「相原裕紀。宜しく、先輩」
 一賀は笑顔を向ける後輩の腹を思いっきり蹴り付けた。
 裕紀は蹌踉けはしたものの倒れはしなかった。
 ――こんな甘い連中に庇われるいわれはない。
 一賀は裕紀の学生服の胸元を掴み直して引き寄せた。
 折れていない方の腕を取る。
 裕紀は奥歯を噛み締めた。
 「バカか、お前」
 一賀は腕を引いて身体を押して裕紀を仰向けに押し倒した。
 頸に手を掛ける。
 裕紀も、浩己も手向かいしなかった。
 「両腕使えなくなってもいいのか」
 「身体が痛むのなんか慣れてるさ。腕でも眼球(めだま)でもくれてやる」
 裕紀は笑った。
 一賀は腰を浮かせて裕紀の腹に膝を落とした。
 「俺に関わってると命落とすぞ」
 「あんたの命を拾ったのは俺たちだ。二度と勝手に捨てられてたまるか」
 浩己が顔を上げる。
 一賀はものも言わずに浩己を殴り付けた。
 ――「龍騎兵(ドラグーン)」でさえ、俺を護ろうとはしないのに。
 「それに…俺たちに痛む傷を付けたのはあんたの方だ…」
 裕紀は腹を押さえて身を起こした。
 一賀はその頸に手を掛け後頭部を地面に叩き付けた。