「セックスアンドザシックスティーズ」 第七話
「典子さんも私も主婦で疲れて、夫で苦労させられたから仕方ないわよ」
「恵子さん!ほんとそう・・・取り返さないとこのまま終わってしまうからね。まだまだ諦めないから、恵子さんも頑張ろうね」
「そうね、銀座にでも行って素敵なお洋服買おうかしら」
「いいですね!映子さんに案内して貰ってそうしましょう。美紗子さんも賛成でしょ?」
「はい、でも銀座は高いのではないですか?」
「年に一度ぐらい構わないわよ。夫のクレジットカードで買うんだから」
「まあ!典子さんったら、大丈夫なの?ばれたらまたもめるわよ」
「恵子さん、いいのよ。金払うぐらいの事しても罪は消えないのよ。どんな苦労させられていると思っているの・・・お金じゃ買えないんだから」
「そうかも知れないけど、あなた自身が惨めに感じるだけだよ・・・私は一銭のお金も貰わずに離婚したから惨めには感じなかった。
ううん、感じて感傷的になっている時間すらなかったの。娘と一生懸命にやって来た。貧しくても気持ちは誰にも負けないようにしていた。だから、典子さんも自分で考えて、自分でやれる範囲で頑張って欲しいの。言い過ぎてゴメンなさい・・・」
「恵子さん。いいのよ、私がなりふり構わずに話してしまったのよね・・・夫のカードは使わないから。ありがとう・・・わたしあなた達と知り合えて本当に良かったと思っているの。この年になって親身に話してくれる友達ってそうはいないからね。
お互いに苦労を知っているから話せることもあったりして・・・いい関係でこれからも続けたいって思う」
「典子さん、そうしましょう。美紗子さんだって独身だけど私達のこときっと解ってくれていると思うの。ねえ?」
「はい、素敵なお二人だと思っています。中身は同じ年齢の女性なんですから・・・変わりませんよ」
「そうそう同じ女性だよね・・・変わらない、変わらない」
典子はそう言って笑った。
恵子も笑った。
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 第七話 作家名:てっしゅう