「仮面の町」 第十七話
「この町の若者では考えられないぐらい大人だなあ。何がキミをそうさせているのか不思議だ」
「よく言われますよ、ハハハ・・・生まれつき性分だったのかも知れませんよ。先祖が探偵だったとか?」
「本当か?その話」
「知りません、思い付きです」
「やられたな!正月だから許すけど、真面目に言わないでくれよ冗談は」
「すみません・・・では久能さんに会えるときが決まったらお知らせしますので、その時は宜しくお願いします」
「解った。約束は必ず守るから。頑張ってくれ、境川市の未来はキミにかかっているんだからな」
「大げさな!買いかぶりすぎですよ」
「いや、そうでもないと思っているよ・・・」
弘一は警部に期待されている以上に自分でそうしなければならないと強く考えていた。事故で子供を失った両親の無念さと悲しさを考える時、
幸せであることが如何に大切な日常であるかが身に染みるのだ。
それを土足で踏みにじった組織や人物をどうしても許せなかった思いが心の中で赤々と燃え盛っている弘一であった。
作品名:「仮面の町」 第十七話 作家名:てっしゅう