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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン

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山鳩が煩く鳴きそれに対抗するかのように蝉も鳴く
北海道には珍しい夏日なのか向こうの景色が少しぼやけて見える
キャーキャーと海で誰かが遊ぶ声と帰省ラッシュかそれとも海を求めてなのかいつもより多く通る車の音
そんな騒がしい周りと正反対に黙ったまま歩く二人
「…京助」
阿部が口を開くと京助が足を止めた
「…本間…どうしてる?」
「え…あ…なんともないよ? 元気元気!うん…元気だよ? 昨日もあったし…」
「そっか…」
会話が途切れた
「…京助は…強いね」
阿部が静かに言った
「アタシだったら…逃げ出してるよ…こんなこと…だって…だって現実じゃ考えられないことなんだよ…? なのにな…」
「現実なんだよ」
阿部の言葉を京助が止めた
「考えられなくても現実なんだ…現実以外のなんでもない」
いつも通りの京助がどこかいつもとは違うカンジで言うと阿部がきゅっと唇を噛んだ
「俺だって逃げたいさ」
ハハッと笑った京助が歩き出す
「…でもさ…現実からは逃げられないだろ」
二人の横を高速貨物トラックが通り過ぎ風が起こる
「それに…」
「…それに?」
京助が再び足を止めた
「【今】逃げ出したくても【これから】は逃げ出したくねぇくらいの現実があるかもしんねぇじゃん…【今】現実から逃げたら【これから】の現実はこねぇだろ? だったら俺は逃げたくても逃げねぇ」
「…わけわかんない;」
「…スマン; 言ってて俺もよくわからんことになってた;」
考える阿部に京助がハッハと笑いながら軽く謝った
「ま…これから楽しくなるかもしれないから…ってことかウム」
京助が頷き納得したのか歩き出した
「…なにそれ;」
苦笑いを浮かべながらも阿部が小走りで京助の隣に並んだ
「ラジオ体操いってるの?」
阿部が聞くと京助が無言で顔をそらした
「…昔は毎日行ってたのにね」
「昔は昔だろ…; …れ?」
ふと京助が何かを思い出して足を止めた
「…どうしたの?」
数歩先に出ていた阿部が振り返り京助に聞く
「…なんで学校違ったのに俺が昔はラジオ体操毎日行ってたって…知ってんだお前…」
阿部が固まる
「確かに…一回会ってる…けどよく覚えてンなぁ…」
「…そりゃそうよ」
ゆっくりと阿部が京助を向かい合った
「だって…」