【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン
「そういえば…」
口をつけかけたコップから口を離した阿部が二枚まとめて口にクッキーを突っ込んでいる京助を見た
「新しい英語の外国人教師来るって話聞いた?」
「はいほふひんひょうひ?」
口をモゴモゴさせながら京助が聞く
「そうグリーンさんが二週間くらい母国に帰るからって代わりの人が来るんだって」
「ほー…全然知らんかったわ; ここんとこってか夏休みはいってから誰ともあってなかったし…」
麦茶を一気飲みして京助が一息つく
「…悠…邪魔くさい;」
京助の背中にべったりくっついている悠助の頭に京助が手を置いた
「悠…どうしたの?」
「夏休みはいってからずっとその調子なんだっちゃ;」
阿部が実はさっきから気になってたの的視線で誰にでもない誰かに聞くと緊那羅がそれに答えた
「…なんでもないもん」
悠助がぷーっと膨れて京助の背中に顔を押し付けた
そしてその後ろで慧喜も顔を膨らませて京助を睨む
「…いや; 俺が悪いのか?;」
その慧喜の視線に京助が顔をそらしてまわりに聞く
「…さぁね」
矜羯羅がクッキーを齧りながらそっけない返事をした
「わざわざ…あんがとな」
玄関先で京助が阿部に言った
「…あ…あのねっ」
少し間を開けて阿部が京助を振り返った
「あ…あのね…アタシ…」
「…途中まで送ってく」
京助がサンダルに足を入れた
作品名:【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン 作家名:島原あゆむ