【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン
「ユビキリ」
ニコッとハリスが笑いそして早く指を絡ませろといわんばかりに坂田にむかって立てられた小指をさらにずずいっと進める
「ゆび…って何でだよ;」
怪訝そうにその指を押し戻しながら坂田が聞く
「大事なことは約束するのが当たり前、そして約束したならユビキリしないと」
「…なんですかその間違った日本の解釈はー;」
ハリスと坂田のやり取りを見ていた南がすかさず突っ込んだ
「やってあげればいいじゃない;」
阿部が坂田に言う
「じゃぁ阿部がしろよ; 俺はいや…っちゅーとろーがーッ!!!;」
いつの間にか坂田の小指に自分の小指を絡めたハリスがにっこり笑って
「ゆーびきーりげーんまんうそついたら…」
そしてご機嫌に歌いながらブンブンと絡めた小指を上下に動かす
「音痴やナァ;」
その歌声を聞いていた京助がボソっと言った
「うっそついたらハリセンのーますゆびきっ…」
「ちょいまて;」
指切ったの【た】寸前で坂田がその歌を止めた
「ハリセンボンだろ?; ハリセンボン…そうだよな?」
坂田が回りに聴くと周り一同緊那羅以外が頷く
「ハリセンじゃなく…ハリセンボンのーます♪ だよね?」
阿部が軽く歌う
「そうだよー? はりせんぼんのーますっていうの」
悠助も途中から歌った
「ハリセン…ボン?」
坂田と小指をつないだままぽかんとした顔でハリスが呟く
「針を千本飲ませるってことだよな?たしか…」
「え? ハリセンボンっていう魚じゃなく?」
京助が阿部に聞くと阿部が違った答えを返してきた
「マジで?; えー…俺は針が千本…だと思ってた…悠は?」
京助が自分の腰にしがみついてる悠助に聞く
「僕はねー…僕も京助とおんなじ」
「な?」
「え? でも俺は魚説もきいたことあるけどなぁ…若はどうですか」
南が坂田にも聞く
「俺も針だとずっと思って…どうなんだ?;」
今だ小指をハリスとつないだままの坂田がそのままうーんと考え込む
「…緊那羅はどっちだと思う?」
「へっ; や…私それ知らない…っちゃし…;」
いきなり話題を振られて緊那羅が少し上ずった声であわてて答えた
「…操なら…知ってた…かもしれないっちゃね」
無理に笑顔で緊那羅が返すと一瞬にして訪れた重苦しい沈黙
「…私じゃなく…」
何気なくだろう組んだ緊那羅の手がかすかに震えている
誰も声が出せない声がかけられない
「…は…ははは…うん、ごめんだっちゃ私にはわからない…本当…わからないんだっちゃ」
「いやラムちゃんはわる…」
息継ぎしてるのかしてないのかというテンポで言葉を発する緊那羅に南が声をかけ…ている途中に京助がずるずると悠助を腰につけたまま緊那羅の前に立った…かと思うと
ドス
作品名:【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン 作家名:島原あゆむ