【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン
ブォ---------------…
三つの言葉
ハリスと悠助以外の全員の時間が止まったように思えた
再びの沈黙の到来にハリスがポリポリと頭を掻いてため息をついたあと
「ハイッ!!!」
パンっ!!
わざとらしく大きく手をたたいて声を張り上げた
それに驚きハッとしてわれに返った一同がハリスを見る
「はりす…さん?」
悠助がハリスを見上げるとハリスがにっこりと笑って悠助の頭に手を置く
「僕はハリス。君は?」
ハリスが悠助から緊那羅に今度は笑顔を向けた
「え…わ…私は…緊那羅…だっちゃ…」
向けられた笑顔に緊那羅が恐る恐る答えた
「OKキンナラだね」
これまたわざとらしく大きな声で【緊那羅】と復唱したハリスが阿部を見てまた笑う
「アベ、キンナラでいいんだね?」
「え?; …あ…そう…です…?;」
聞かれた阿部が戸惑いながら頷いた
「よしよし…キョウスケにサカタにアベにユウスケに…ナカジマだっけ?」
「…南だっぴょん…;」
一人だけ間違えられた南がさめざめと坂田の肩に頭を着けその南の頭を坂田が押し戻した
「で? ミサオって誰?」
ブォ--------------------------…
ハリスがニコニコしながらその名前を口にした
「…操…は…」
坂田が呟きながら緊那羅を見ると緊那羅が気まずそうに俯きぎゅっと拳を握る
「操ってのは…操って…いう…のはだな…その…」
「今はいないけど京助の大事だった人」
続きの言葉が出てこなかった京助の言葉につなぎ足すように坂田が答えた
「いない?」
ハリスがきょとんとすると坂田がむっとしてハリスをにらんだ
「察しろよ!! それでも先生なんか阿呆!!」
「さ…かたくんどーどー;」
怒鳴った坂田を南が止める
「っていうか他人首突っ込むな!! すげームカツク!!!」
南に抑えられてもなおハリスに対して敵意剥きだしで怒鳴る坂田にハリスが驚きの表情をしている
「興味本位で…興味本位でその名前口にすんじゃねぇ…」
一通り怒鳴った後シメの一言を言い放った坂田がギロっと極めつけとでもいうかのようにハリスをにらみ上げた
「…若ー; 若こわーい;;」
冗談交じりで南が坂田の肩をたたいた
「…OK…悪かったねサカタ…」
ため息をついてハリスが坂田に謝ると場に安堵の空気が流れた
「もう言わないし詳しくは聞きたいけど聞かないよ…約束する」
「わかりゃいいんだわか…りゃって何だよコレ;」
気づけば顔の前にずずいっと出されていた小指に坂田がハリスを再び見た
作品名:【無幻真天楼 第十二回・弐】ハリスのハリセン 作家名:島原あゆむ